TickeT
望まぬ不死者(5)
驚き、跪いたままいる僕を、動きだした彼は見つめていた。
「だから…死なないんだよ」
刺した痛みからではなく、自分が望んでいる結果にならない事に悲しんでいる様だった。
「ほら、見ろよ。こんな事したって死なないんだぞ」
突き刺したナイフで自分の胸をこれでもか、これでもかという風に何度も何度も掻き混ぜていた。
「ううっ、もう止めてくれ」
あまりの光景に目を逸したが、今見た映像は凄愴な音と共に鮮明に現れる。涙、吐き気、苦しみ、悲しみ、とめどなくどんどん出てくる。
「死なない、死なない。どんなに傷つけても…」
ナイフを刺す勢いは、子どもがスタンプを面白がって押すかの如く。そして何度も何度も何度も。
「止めてくれ…止めてくれー」
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