TickeT
這い寄る夜襲(8)
「……」
割れたガラスをぼっと見つめていると、何かが動く音──とまではいかず、動いたと思える雰囲気があった。
──誰だ──
言葉は出てきていたし、声にしようとも思ったのに、それは出したいという「希望」のままで、出すという「意志」にはならなかった。声が出てこない事自体に違和感を抱きつつ振り向いた所には、影も何も動いた様子は無かった。
「いませんよね…」
見て、いないと分かるとやっと声が出た。
「この状況はかなり怖いな…。これもチケットの…そんな筈はないか」
「──」
「えっ」
後ろを向くにつれて鼓動は大きくなっていった。
──誰だ、誰だ、誰だ
そして完全に後ろは向けず、そこに影とその持ち主が在るのが見えたところで、僕は落ちていった。
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