TickeT
移り行く振動(9)
「いや…ですから、その抑止力が何なのか気になりますか、と言う事ですよ」
「ええ、まあ気になりますね」
「そうでしょ、気になるでしょう。でも今はそんな事を話す場面でないので、まだ言いませんけどね」
「……」
少しは「またやられた」という悔しさから、少しは「またやってるよ」という呆れから黙ってしまった。
実際に音が聞こえた訳ではなかったが、その瞬間に彼女はそう言っていた気がする。僕に聞こえない程度の小ささで。彼女から出ている雰囲気はそう言っていた。
──くすっ
僕が黙っているのを見て、彼女はほんのり嬉嬉としている様に思えた。激しくは動かず、ただ心では小刻みに揺れていただろう。
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