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TickeT
移り行く振動(5)
 ──どうしてだろうか、違う動作をしているのに、それが一つの行動を表すのは──


 気分は緩んでいる状態から引き締めた状態へ、顔は力を入れた状態──とは言っても、怒っている時の様な表情ではなく、頬周辺が小さく緊張をしているだけであるが──から力を抜いた状態へと変えていった。

「やっぱり」

 彼女は真面目な顔に戻りそう言うと、次の言葉までに一拍の間を作った。僕は少しの静けさに、なぜだか砂塵の違和感を受けた。

 彼女はそこに一体何を入れようとしたのだろうか、本当に何も入れるつもりが無かったかも知れないが。いつもなら気づきさえしない砂埃が、今は気になってしまった。

 僕の疑問に対して彼女自身が思った事を──例えば「決定権だけでなく、他にも移動があったのでしょうか」とでも──言おうとしたけれど止めただけなのか。

 そうなるだろうと予期していたので、その事を表すために続ける言葉の「そうでしたか」を言わなかっただけなのか。

 色色と予想はできるが結論は出せていない。

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あきゅろす。
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