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TickeT
理由あり存在(6)
 ──ゴクンッ



 ついに結論が下されると思うと、ただ固唾を呑み込むだけでもいやに音が響いた。


 一体掘られる穴はどれくらいだろうか? おそらくは深くないだろう。


「貴方は理解できないかも知れませんが──『存在するために名が付けられる』を逆に言えば『名を持つためには存在する理由が必要である』という事になります。名は理由という鎖を使ってなんとか付いている訳ですから」



 この瞬間は「どうせ分かりませんよ」と捻くれて、彼女の言った事を深く考えなどはしなかった。


 しかし後々考えてみると「人間は存在したから名を付けられたので、存在するために名を付けられる事など考えないでしょう」という事を言いたかったのかとも思う。


「──ですから、存在理由が無くなれば、名を縛るものも無くなるので、自然と名が廃れていくという事なんです。彼の存在理由が無くなった時点で、名もまた消えていった様に。
 そして『理由という名』こそが、私達を取り囲んでいる唯一の理法なんです」


「…………」


 そんな事を僕が理解できるはずがなかった。


 しかし、言われた事を全て受け入れるしか、僕の中に答えを置く方法はなかった。

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