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TickeT
理由あり存在(5)
「次は貴方が一番気になっている事……彼の名が消えた理由です」


 彼女は僕が持っている紙に目をやった。自然、僕も釣られる様に手元を見た。


「先程も言った事ですが、名が残ったままですと像を思い浮かべ易くなります。そのため偶発的に体を創り上げてしまう可能性が上がります。
 しかし理由無き所に体が現れてはいけません。ですから理由が無くなった時点で、名は消えるようになっていなければなりません」


 言わずもがな、僕が今疑問に思っている事に対する答えがそんな事だとは思えなかった。


 彼女が言ったのは、自分達の考えている事である。そんな願望のために名前が消えたとは思えない。


「それと名前が……」


 僕が言い終わる前に、彼女は続きを割って入れてきた。



「しかしそれでは、名が消える事とは繋がりません。名が消えた理由は、名が付けられた理由の逆の原理からです」


「…………」


「私達の大本となる事象というのは『繋ぎ』や『刻』等と抽象的に言われ、一つ一つに形を表す名などありません。そのままですと全てが等しい尺度のまま。孤が全であり全が孤であるので区別できません。ですから存在するためには体を表す名を無理矢理付ける必要があります。
 我々の名は人間の名前とは違い、存在したから付けられるのではなく、存在するために付けられます。そしてその逆の原理というのは……」

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