[携帯モード] [URL送信]

TickeT
理由あり存在(3)
「記憶はあるけど名前が消えたのは分かんないままだし、名前が体を成すとか、一体どういうことなんですか?」


 元元分からなかった事がさらに分からなくなり、ついに言葉がでた。


「理解できないのもかまいません。理解してほしい事はそんな事ではなく、私達が存在している根本的理由なんですから」


「根本的……理由?」


「はい。その根本的理由というは……」


 頭の中にちらついた「彼女の言う事が理解できるのか」という疑問。


 その考えが浮かんだ瞬間僕はほんの少し顔をしかめてしまった。


「──私達は形無き抽象を貴方達、人間の目に見える様にするため、形を与えられているだけであるという事です」


「…………」


 言う迄も無く、何を言っているのか分かりなどしなかった。僕は黙っているしかなかった。




 瞬間の間、そして彼女は口を開いた。


「分かりませんか?」


 向こう岸から送られた、一艘の助け船。溺れる姿を見られたので恥ずかしいが乗らない訳にはいかない。


「はい……もう少し簡単に言ってくれませんか?」

[back][next]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!