TickeT
理由あり存在(3)
「記憶はあるけど名前が消えたのは分かんないままだし、名前が体を成すとか、一体どういうことなんですか?」
元元分からなかった事がさらに分からなくなり、ついに言葉がでた。
「理解できないのもかまいません。理解してほしい事はそんな事ではなく、私達が存在している根本的理由なんですから」
「根本的……理由?」
「はい。その根本的理由というは……」
頭の中にちらついた「彼女の言う事が理解できるのか」という疑問。
その考えが浮かんだ瞬間僕はほんの少し顔をしかめてしまった。
「──私達は形無き抽象を貴方達、人間の目に見える様にするため、形を与えられているだけであるという事です」
「…………」
言う迄も無く、何を言っているのか分かりなどしなかった。僕は黙っているしかなかった。
瞬間の間、そして彼女は口を開いた。
「分かりませんか?」
向こう岸から送られた、一艘の助け船。溺れる姿を見られたので恥ずかしいが乗らない訳にはいかない。
「はい……もう少し簡単に言ってくれませんか?」
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