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TickeT
理由あり存在(1)
「ここに……、ここに名前が書いてあったはずなんですよ」


 当然僕は、こんな事信じられないので焦りながら彼女に元は名刺だったはずの「紙」を見せた。


 しかし彼女は、僕の言っている事が当たり前であるかのように、目線だけを手元にちらっと向けただけでなんの違和感もなく話し始めた。



「貴方と私、二人が会う事によって『繋ぎ』である彼の存在理由が無くなりました。彼は、私というより離れた位置ある存在をチケットの元へと導く道筋だったのです。
 私は今、貴方の元に辿り着くこと……いや、貴方が私を認識することができました。その結果として名が消えたという訳なんです。
 元来私達の名は、貴方達に記憶してもらうためにあるのではありません」


 言っている意味は分からなかったが、名前が消えた事は覆しようがない事だった。


 僕は言うべき事が一つ、疑問として浮かんだ。


「僕の頭の中にある、あの男性の事が全て薄れているから名前も思い出せないのなら分かりますが……、記憶は……彼のことはしっかり覚えていますよ。
 記憶は消えていないのに名前が消えるなんてどうなってるんですか? 時間がそんなにたっている訳でもないし、そんなにややこしい名前でもなかったはずです」

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あきゅろす。
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