TickeT
響く足音(6)
「何も仰しゃらなくていいですよ。彼には分からなかった様ですが、私には分かります」
「…………」
そのとき僕の唇は震えていたと思うが、言葉は発していなかった。
彼女はそれを予期していたのだろう、そのまま話し続けた。
「この様な状況になったのは間違いでですが、貴方は既に受け入れているのですね」
そう言うと、彼女は後ろに回していた両腕を僕の方に伸ばした。
腕にはそれぞれ、異様な数の文字盤が付いた腕時計を嵌めていた。
「これを見てくれますか」
彼女は、全ての文字盤の中で唯一生きている、右腕の一つを指差した。
「この針は、貴方が『運命』を受け入れたために動き出しました。そして文字盤の数字の表している物が、貴方に残された時間です」
文字盤を見ると、彼女の時計は普通の時計とは違い、数字が少なくなるよう刻まれている事が分かった。
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