TickeT
響く足音(5)
「よしっ」
僕は前へ手を伸ばした。把手をぎゅっと握り、扉の方に想いを加えた。
──キイッ
どこかがずれているからこそ軋む。
壁は小さな音とともに開けていった。
大きくなる隙間から人の隻影が見えてきた。
目の前に現れたのは女性だった。
風采は、チケットを持って来た彼と同じ黒いスーツを着て、同じ雰囲気を兼ねている。
顔に微笑を浮かばせ、こちらを見ていた。
「違いますね」
僕はその言葉に胸をドンッと押された気がした。
「……何の事ですか?」
「貴方は嘘を吐いていらっしゃる」
「えっ、あの……」
なんと言えばいいか分からなかった。
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