TickeT
響く足音(4)
「よしっ」
僕は扉に向かって一つ意気込んだ。
「きっとこれが最後の機会になるんだ」
敢えて口から出した。弱気な自分を追い出すために。
扉まで続く、自分の足音が走れそうなほどの静。
自分の中にある、小さな足音も聞こえそうなほどの感情の動。
扉に近付いて行っても、向こう側ではいつもの如く微動だにしない。
僕は扉にもう一、二歩進めば手が届きそうな場所で止まった。
「これで最後だ。これが最後なんだ」
僕は何度も何度も繰り返した。手にはしっかりとチケットを握りながら。
──ドクンッ
僕の中で何かが脈打つ気がした。
すると、何故だか恐怖がすうっと引いていった。
[back][next]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!