TickeT
響く足音(3)
──カツン、カツン
単なる靴底が地面に当たっている音に過ぎないが、今はその靴が見えない。
──カツン、カツン
音だけで考えると、確かに近くまで歩いて来ているようだ。
「寝惚けてるのか?」
確かに、夢の中で感じる──夢の中では何も感じないと言った方が適当かも知れないが──独特の感覚があった。
しかしそんなはずはない。これは現実に起きている事だった。
足音は僕を気にする事無く通り過ぎて行った。
音は見えなくなると、玄関の近くで止まったようだった。すると、周りは元の夜に戻っていった。
暫しの沈黙があった。僕と、夜と、見えない人との間に。
[back][next]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!