TickeT
響く足音(2)
僕は窓の側で椅子に座りながら窓を開けた。狭い隙間の上に肘を乗せ、頭を凭れてぼっと空を眺めた。
月が見える。
緩と時間が僕の周りを通り過ぎる。
ちらちらと、周りを気にする事を忘れてしまっていた。
ふと、窓の側にある彼の名刺を手に取った。
「何も無かったらこれを裏にするんだよな……」
僕は名刺を表のまま置いて大きく欠伸をした。すると、その伸びから戻り切る前に、
──カツン、カツン
遠くの方から小さな音が歩いて来た。
「来たっ」
僕は椅子を倒しそうになりながら立ち上がった。
遠くを探したが、そこには音しかない。姿は見えないが、足音だけは段々とこちらに向かって来る。
空気は揺らしているが、光は全くと言っていい程揺れていなかった。
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