TickeT
響く足音(1)
五日目、六日目も、その謎の人物がやって来た。
その度に、僕は扉の前まで行く事はできた。
しかし、その重い扉を動かすための一歩のみは、決して生み出す事ができなかった。
そして、最後の七日目──
人間というのは、これで最後だと思うと、意外に進めるものだ。
そのためには、それなりの意がそこにあるという事が前提条件になるが。
僕はその事を、身を以て体験した。
僕は四度目にして、やっとの思いで壁を開く事ができた。
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「そろそろかな?」
あの人物がやって来る時間帯の予想は、それまでの三回の訪問で大体できていた。
僕はふと、外の景色を目の前に流して見た。流れの上に人影は乗っていない。
ちらっと何かが動いた気もしたが、それは雲の影の揺らぎが成した、単なる悪戯に過ぎなかった。
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