TickeT
待ち受ける壁(6)
しかし目線を下げて見ると、そこには人がいた形跡が確かにあった。
雨によって体が濡れ、付いていた水滴の滴りのためにできた、いくつかの小さな点。
目線を上げて見ると、少し前から降っていたはずの雨が、いつの間にか止んでいた。
空に広がっていた雲もいつの間にか消えている。
月はこの雨で何かを洗い流す事ができたのか、とても美しく輝いていた。
美しい月を見ても、僕は心の中に蟠りを抱えまま家の中に入った。
綺麗な鏡に、その時の僕の不安は映し出されていなかった。
僕の不安は目を背けられていたのだろうか?
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