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04


今日はなんの話をしようか。


音楽のこと?学校のこと?
チェロの話もいいかもしれない。


だって、もっと僕のことを知ってほしいから。











「今週の土曜日?」



今日も今日とて、教会でお喋り。
最前列のピアノの前が僕の、そして僕の左隣が葉山さんの定位置になりつつある。

不思議そうに聞き返してくる声に、僕は頷いた。



「うん、土曜。予定、入ってる?」
「空いてますよ。予定は何もないです。」



でもどうして、と首を傾げながら聞いてくる彼女に視線を合わせる。
葉山さんの頭の上に、思いっきりはてなマークが浮かんでいるのは言わないでおこう。



「チェロを引き取りに行くから。」
「あ、メンテナンス終わったんですね。」



嬉々として両手をポン、と叩く彼女に思わず笑みがこぼれた。
自分が話したことを覚えてくれていたんだ、と少し嬉しくなる。

志水さんのチェロ聴いてみたいな、と呟く彼女。
その言葉に、胸の鼓動が少し跳ねた気がした。



昨日、メンテナンスを頼んでいた楽器屋から連絡が来たときから思っていたこと。

僕のチェロが戻ってきたら、葉山さんに聴いてほしい。
できたら、一番最初に。


断られるかもしれない。
他人の、それも会って間もない人の用事だ。

そう考える弱気な自分を端に追いやり、思い切って口を開いた。



「…一緒に来てくれない、かな?」
「え?一緒に、ですか?」
「ダメ、かな?」



おずおずと聞き返せば、両手を振りながら慌てた様子で、そんなことない、と答えが返ってくる。


僕は、そんな彼女の隣でそっと胸を撫で下ろした。



僕、緊張していたのかな?



ぼんやりと、頭のどこかでそう思った。
人前に立っても、舞台に上がっても、緊張したことないのに。





なんで、葉山さんに僕のチェロを聴いてほしいと思ったんだろう。




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