Children Record
シ
「ど、どうしよう……!」
「身代金十億か……犯人のほうも随分アホだな」
「何か十億って頭悪いっぽいですよね。なんか『子供の想像する大金』みたいな」
私の横で話を続ける2人は、なんだか呆れ返っていた。
死んでしまうかもしれない、という自覚がないのだろうか。
「十億ってどれくらい?」
「お前が一日二本の造花を作って、一億日分の給料だ」
「……え? どういうこと?」
「いや、お前はもういいから……」
この子は普段なにをしているのだろうか。
そしてなぜこんなにも落ち着いて居られるのだろうか。
「えっ、と、なんでそんなに落ち着いて……?」
「あぁ、さっきそこで捕まってるやつの中にとんでもないアホがいたからな」
「ええっ」
全然状況が読めない。
「え、えぇと、ちょっと待ってくださいね……これがああで……」
モモちゃんはさっきからなにをしているのだろうか。
私が見たのとは違う携帯で何かを打っている。
「別にいいが……ホントに何とかなるのか?」
「はい、多分……あ、あれ? えーっと……」
ふと、手を止める。
何かを考えている様だ。
「あ、やばい……やっぱダメ……?」
「な!? どういうことだ!?」
「ひぃ……ちょっと待ってくださいって……うぅん……」
「ねぇねぇ、なに相談してるの……?」
「っ」
突然、私の頭の中に誰かが侵入してきたかのように声が響く。
左目が痛む。
視界が霞む。
いま、見えているのは白いガーゼだけだ。
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