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詩集
握りしめた森に
私の握りしめたそれは
どうやら
すべてではなかった
強く握りしめた
それはかけらだった
削られてもおらず
本当は
核でもなく
握りしめたそれは
どうやら
ただのかけらだった

その場の
窮屈で
がらくたと
プライドの転がる
平地を見回しても
悲しみは見えなかったが
涙は出ていた
鼻汁も出たが
涙ほど心地よくもなかった
私は時間をかけて洟をかんだ
舌についた液体からは
ふざけきった近未来と
まともな悲しみの味がした
どこか見知らぬ土地の
見知らぬ誰かが
悲しんでいるように思えた
これは
私のものではないと思えた
ようやく
そう思えた

私はちり紙を握りしめた
握っていたかけらは
それがなんだったのか
わからないまま
誰かの底へ落ちていった
悲しくはなかった
ただ
涙が流れた
心地よい熱と
冷たいあとくされを
頬に感じた
私はまた
ゆっくりと
時間をかけて洟をかんだ

握っていた
ずいぶんと重くなったちり紙を
離すと
両手には何も
残らなかった
私は自分の体を抱き
何度も滅入るほど
ゆっくりと
時間をかけて泣きはじめ
ゆっくりと
時間をかけて泣きやんだ

波風のない
誰かの悲しみを味わいながら
はやく泣きやんで
洟を
かめばいいのに
泣きやんで
何もかも握りしめて
森に
なってしまえ
そうしたら
私がその
誰かの森を握りしめて
頬に残った冷たさを
拭ってやるのに
時間なんて
いくらもかけずに
涙を拭ってやるのに
それがなんだったのか
わからないうちに
私が

そう思った

私は
ゆっくりと時間をかけて泣き
ゆっくりと時間をかけて泣きやんだ
ゆっくりと時間をかけて洟をかみ
ゆっくりと時間をかけて指を曲げ
いやに
焦燥する
ちり紙を握った
握りしめた森に
集った
青の森に
誰かの
涙はようやく
核となって
握りしめた森に
崩れて
落ちていった

木の一本も見えない
それはなんだったのか
わからないままに
影も見えず過ぎ去っていった
悲しみは見えなかったが
また涙が
出ていた

君が
拭ってくれないのか
大人びた君の
涙じゃないのか

悲しみは見えなかったが
涙はあふれていた
それがなんだったのか
私の涙は知らなかったが
ただ
私のものではないと
思った
そうであれと
強く思った



あきゅろす。
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