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詩集
それは話を
それだとか
このだとか
空がとか
恋だとか
崖の上からの射精だとか
滑空するボンネットに
飛び乗るだとか
そんなこと
冷凍庫の中の事故だとか
乾麺にわいた甲虫だとか
帽子のつばについた
けむりのにおいだとか
よく燃えた
四つ葉のクロウバの押し花だとか
そのはぜる音だとか
その灰のあった机だとか
目を離したときにだけ
よく動く指だとか
そんなこと
何かに任せてしまう
手首の傷を
誰かに舐めさせてしまう
ボイラーから立つ湯気を
隠してしまう
その六月
床に投げ出された
赤いセーターに向けて
書いた22枚のラブ・レター
そんなこと
何かに任せてしまう
凍り付いて
燃え上がる迄の時間を
長い長い時間を
巻き戻して
次は誰に
火をつけてもらおうと
山のように積まれた過去が
部屋とともに燃え上がり
消えかかる火種を
手にとって
そんなこと
任せてしまいたくなる
銀色のライターを
灰色の道路の
白線の上に立て
ただひたすらに
誰かが過去を
誰かの部屋とともに
燃やしてしまうのを待つ
そんなこと
燃え上がる部屋の
熱くなった扉の前で
そんな話を
してみたかっただけで
それは話を
してみたかっただけで



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