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詩集
さぼてん
そうです
駅前の
薄緑色のコインロッカーです
上から二番目
左よりの一番大きな
ええ
日額三百円の
ロッカーの中です
少し大きめのを入れておきましたので
お受け取り次第
御連絡ください
はい
暗所の保管が原則です
また
大きさに関わらず重いものですから
ロッカーの底が
いくらかへこんでしまっているかもしれませんが
そうそう
湿気にも弱いので
雨の日にはあまり
窓を開けないでやってください
特にデリケートな品種なので
あまり
重圧や精神的な負担なども
ご注意いただきたいと
ええ
丸くて
色の無い水風船のような
あたたかいですよ
われわれのように
磨り減ってもいませんし
暖房代わりにしては
少し物足りないかもしれませんが
正確に
ではありませんが
平均して

五年ほどで濁ってしまいます
ええ
そこまでは少し
わかりかねます
はい
我々はあくまで販売者ですが
製造者にもわからないブラックボックスが
少なからずありまして
ああ
そちらは雨でしょう
できれば
お早めに取りに伺われたほうが
夏の夜は
蒸しますのでね
本当です
生きていますよ
今はロッカーの中にです
ええ
そうですとも
ええ
お早めにお受け取りください
濁ってしまいますので
夏の雨が蒸すロッカーなど
どんな経済社会よりも
ええ
生きているのですから
あなたさまと同じように
生きています
はい
ええ
鍵ですか
ロッカーの扉についた鍵穴に
あなたの命をお入れください
ええ
汚れているでしょうね
中の見えない水風船を
小さな鍵穴にお入れください
ですが
それにだって
三百円程度の価値はあるのでしょうから
はい
根腐れしたさぼてんにも
それくらいの価値はあるものですから



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