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二次創作/夢
強烈!鮮烈!激震!











「遅えぞ生駒ァ!!」

「あ、イコさんやっと来ました?」

「ウワ濃っ………」

「志島ちゃん連れてきたんやしええやんか」


チームミーティングの為に臨時の即席作戦室へ入ると、張りのある声が生駒と絲を出迎えた。その後に続いたのんびりした声との対比がすごい。思わず心の声が漏れ出てしまったが、相手には聞こえなかったようで安心した。椅子があるのに何故か部屋の中央で仁王立ちしている厳つい印象の男・弓場拓磨、そしてマイペースに手を振る罪深きイケメンサンバイザー・隠岐。チームメイトの顔を素早く眺めてから生駒に目をやり、絲はキュッと口を引き結んだ。このチーム、皆キャラが濃すぎる。辛い。


「お前が志島かァ…」

「、はい。今日はよろしくお願いします」

「オシ、やるからには勝つ!簡潔にテメェの出来ることを教えろ!」

「志島ちゃんは旋空弧月使えるで。俺が仕込みました」

「攻撃手なんか銃手なんか分からんけど、器用ですしねえ。弓場さんにも近いんとちゃいます?」

「……そんな感じです!」

「口挟むんじゃねえぞ生駒ァ!!隠岐ィ!!」


弓場とは初めて対面したが、見た目と違わぬ口調の割に隠し切れぬ真面目さが端々から滲み出ている。彼の特徴的な眼鏡の上に仁王立ちしている8万3000の数値は集中線を背負っており、静かに主張が激しくて驚いた。強めの語気の余韻が「ァ!」と響く度にギュンと勢いよく動き、その後すぐにスッ…と静かになる。眼鏡の上に陣取ってるのも一瞬だけ機敏に動くのも、何もかもが気になり過ぎて最早ガン見の域だ。
一方弓場からすれば物怖じせず視線を合わせてくる奴だな、と好印象である。即席チームの隊長として実力の把握をしようと問いかけを投げた所、何故か生駒隊の二人が首を突っ込んできた。弓場も絲も何でだ、という顔になる。絲はツッコミを諦め、弓場は場の空気を緩める二人に喝を入れた。


「えっと、二人が言っていることはあながち間違いではないです。旋空弧月と拳銃を組み合わせた近・中距離攻撃ができますが乱戦はまだ経験がないので、どこまで動けるかは分かりません。
あと機動は並ですね。今日はグラスホッパーを入れてきたので、少しはマシかと」

「お、隠岐と志島ちゃんグラスホッパー仲間やん」

「ホンマですわ」

「…志島ァ、お前誰なら落とせる自信がある?」

「流されてしもた。え?俺空気?」

「イコさん存在感強すぎるんで大丈夫ですわ」

「そう?」

「…弧月使いであれば確実に不意を突く自信はあります。幸運なことに、唯一その戦法というか…小細工を知ってる弧月使いが同じチームなので試す価値はあるかと」


生駒隊揃うとうるせえー!!よく回る口だな!と、絲は一周回って感心した。
真面目に話している所へマイペースに加わってくる二人をそれとなくスルーし、弓場と絲は会話を続ける。その中で絲が口にしたのは、生駒との模擬戦の中で編み出した戦法のことだった。二宮や風間にもよく手ほどきを受けているが、絲が最も手合わせしている人は誰かというと隣でとぼけた雰囲気を出している生駒である。それを生駒本人から聞いて知っていた弓場は、実際どうなのかと生駒の方へ目を向けた。


「お、志島ちゃんアレやるんか。ええんやない?俺も知らんかったら普通にやられるし、分かってても対処すんの中々面倒やで」

「よし。
この模擬戦はまだ手の内が割れてねえ志島がキモだ!気張っていくぞオラァ!!」

「はい!」

「はぁい。勝ったら焼肉なんて楽しみですわあ」

「任せとき。志島ちゃんが勝たせてくれるで」

「…締まらねえな、テメェらはよ…!!」


さて、生駒隊二人のおかげでゆるく始まったチームミーティングだが、それもすぐに終わりを告げるブザーが鳴る。転送開始までの残り時間がモニターに表示される中、そういえばと絲は疑問を口にした。


「フィールドはランダムで市街地Aに決まってるんですよね?今回は天候もランダムなんですか?」

「東さん曰く“どのチームにとっても公平な条件でのスタート”だからなァ…多分そうじゃねえかと踏んでる」

「まあ初心者マークの志島先輩居るんやし…もし選択権が東さんにあっても変なのは来ないんとちゃいます?」

「そうやと良いけどなあ。志島ちゃん、困ったらすぐ言うんやで!!」

「ありがとうございます。落ちるにしても役立ってから落ちるようにしますね」

「その意気だ志島ァ!」

「志島先輩かっこええ」

「カワイイのにカッコいい志島ちゃん最強やで!」


どうにも最後の最後まで締まらない。転送開始の音声を耳が拾うのと同時に、絲は思わず吹き出してしまった。

各チームの隊員が光の筋となり、ランダムに転送される。地面に足が付いたと認識した瞬間、絲はバッグワームを起動した。一番場慣れしていない己を他チームが落としに来るのは想定済みのため、まずは身を隠すことを優先したのである。
さて、ここはどこかと住宅の塀から辺りを見回してみると日の傾きに気が付く。一斉通信で知らされた時刻は17時30分―つまり模擬戦をやっている間も日が暮れていくということだ。地味に面倒な設定をされたなと眉をひそめる。市街地Aという大した明かりが見込めないステージでは、暗視の補助をオペレーターにしてもらうタイミングが難しいからだ。戦闘の最中で夜になったとすれば暗視モードにせざるを得ないが、視界の急な切り替わりに足元を掬われかねない。


〈歌川隊員と嵐山隊員に志島隊員は挟まれるような形ですので、位置取りには注意を〉

〈はい。見た感じ、二人はスピード重視で合流するみたいですね〉

〈そのようです。太刀川隊員は嵐山隊の合流地点を読んで南東から南へ移動中です〉

〈志島了解。出くわさないように迂回ルートをお願いします〉


オペレーターからの通信に耳を傾けつつ、レーダーを表示する。北に反応4、中央近辺に反応3、そして南に自分除く反応3。今回は合流を第一にした隊が多いのかバッグワームを起動している人は少なく、盤面の把握がしやすい。戦況の変化が激しい模擬戦になりそうだ。
自分も急がねばとレーダーで動く点の移動速度を確認する。見る限りではどうにか間に合いそうだった。すぐさま走り出して目標地点へと向かう。


〈志島ァ、南方面はお前ら四人だ。やれるか〉

〈、はい。合流する前に撃破します〉

〈よし、北方面(こっち)は俺と隠岐で押さえておく。俺ァまず米屋をやる、隠岐は出水を狙え。生駒は中央だ〉

〈隠岐了解。位置に付きますわ〉

〈なんか俺だけ雑やない?〉

〈イコさんにしか出来ませんて、攻撃手二人相手とか〉

〈まあええか。鳩原ちゃんどこ居んのか分からんの怖いけど、荒船と三浦見っけたら遊んでこいっちゅーことやな〉

〈場所割れてないのは鳩原か…厄介ですね。分かりました、私も気を付けます〉

〈暗視モードは各自必要と思った段階で入れろ。タイミング間違えるんじゃねェぞ!〉

〈志島了解〉

〈了解ですー〉

〈タイミング間違えない、了解〉


相変わらず生駒隊の二人は返事が緩い。ある意味そういう所が強みなんだろうなと苦笑しつつ、絲は腰に佩いた弧月の柄に手を掛けた。通信の間も先へ先へと急いだからか、待ち伏せは成功のようだ。フ、と腰を落としてその時を待つ。


〈目標、一つ向こうの道路を直進中。あと距離30、20、〉


タッ、タッ、と軽やかに駆ける音が聞こえてきた。


〈距離10、〉


オペレーターが今!と声を上げるのと同時、絲は眼前の家屋に向かって(・・・・・・・・・・)旋空弧月を放った。
渾身の一撃は大きな衝撃波を生み、一階部分から上が上空に持ち上がる。旋空の軌道上に開けた隙間から、黒い隊服の男―太刀川の姿が見えた。互いを同時に視認した瞬間、太刀川はニヤリと口端を歪める。グラスホッパーを展開して器用に崩れ行く家屋を迂回し、瞬く間に肉迫してくる反応の速さは流石だと絲は内心舌を巻いた。


「よう志島。中々おもしれー登場じゃねえ、か!」

「っ突然失礼しました!でもこの役目は私のものと最初から決まってたので!」


グラスホッパーにより推進力が増した太刀川の一撃は重く、受け太刀で必死に流すがそうは保たないと感じる。本来の二刀流で来られてはたまったものではないので、早々にやってしまおうとバッグワームを解いた。グラスホッパーを展開し、後ろに跳躍して距離を稼ぐ。爪先が地を擦るのと同時に上半身を大きく捻って弧月の鞘を握り、絲は深く腰を落とした。それを見た太刀川はお、と声を上げる。それもそのはず、生駒が旋空を放つ時の体勢と全く一緒に見えるからだ。

(俺に旋空で勝負挑むとは、ますます面白いな)

ならばと両手に弧月を握った太刀川は、己も旋空を放とうと構える。なにせ純粋な力比べは大好物だった。
が、それは叶わない。銃音と共に風穴が複数開いた(・・・・・・・・・・・・・)からである。ピシピシとひび割れる音が耳に響いた。


「!?」

「すいません、太刀川さん。楽しみにしてたと思うんですけど」

《警告、トリオン漏出甚大》


太刀川が絲を見ると、着用しているジャケットの脇下辺りに穴が開いていることに気が付く。弧月の柄を握っていると思っていた手には拳銃が握られていた。旋空と見せかけて警戒や勘違いを誘い、銃身を隠したままジャケット越しに凶弾を放ったということだろう。


「でも、あなたを撃つと決めてたので」

「…成程な、引っ掛けか。やられた」

《戦闘体活動限界―緊急脱出》


ドン、と光の筋が上空に伸びる。
それを見送ってから、ショルダーホルスターに拳銃を仕舞う。現在オフにしてある弧月と共にメイントリガーにセットされている拳銃は、脇の下でその存在を主張していた。











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あきゅろす。
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