二次創作/夢 とある彼女の騙し愛。5(笠松/夢) 「―…ごめん、心配かけた、よね」 「ホントだよ。俺の心臓止まったらナンパできなくなるだろ!」 ―どうしてくれんだ、責任取れよ。 いや、止まってないでしょ? 下らない会話の後に、少しの沈黙が走る。その中で先に話し始めたのは、朔だった。 「私、ね。小さい頃、小学校くらいかな。笠松…ううん、幸ちゃんと幼なじみってことからかわれたの。 幸ちゃんはね、からかうのもからかわれるのも大嫌いだから… 「女」の子であるわたしのせいでからかわれたから、「女の人」全般だめになっちゃったの。」 ゛女なんて大っ嫌いだ!゛から、「苦手」になって、ずーっと話さないうちに、会話もダメになっちゃった。 静かに森山が聞いてくれていることに安堵を覚えながら、更に話を続ける。 「でも、側にいたかったんだよ…っ」 だから、どうすれば良いのか考えた。 「驚いてたよ、幸ちゃん。面白かったなあ… ―段々話してくれるようになって嬉しくて。もう側に居れるならこれで良いやって、」 「岸川、」 「男らしくなるように、私服もね、」 「岸川」 「……っ、 森山…、私、疲れちゃったよ……っ!」 黒曜石のような瞳に、涙がたまり始める。森山が名前を呼ぶと、ついにそれは雫となって零れ落ち、彼女の固く握られた手の上に落ちた。 「―…頑張ったな、」 嗚咽を漏らしながらも、彼女の口は止まらない。 そんな朔を、森山は静かに見守り続けた。 外はもう、太陽がその姿を隠している。室内灯に照らされながら、彼女の独白は続く。 「でも、自分勝手だけど…っ私、幸ちゃんが、好き…っ!」 一緒にいたいよ、でも、私のせいで女の人嫌いなの?どうしよう、私も嫌われちゃう。そんなの嫌だよ、側にいさせてよ、 「どうしようもなく好きなの、 バスケが大好きなとこも、本音が上手く言えないとこも、昔から何も変わってない、 そんな幸ちゃんが大好きなんだよ…っ」 とても、とても長い片想いは、この少女にとってどれほど重く、辛くのしかかっていたのだろう。 それでも止められなくて、どうしようもなくて。唯一側にいられる手段を駆使したのだと、そう彼女は言った。 森山は、傷だらけの身体にさわりの無いように頬を撫ぜ、扉に向かって、ぽつりと呟いた。 「…だってさ、―――笠松」 [*前へ][次へ#] [戻る] |