二次創作/夢
とある彼女の騙し愛。4(笠松/夢)
「笠松っっ!!」
バンッ、と部室の扉が勢い良く開かれ、名前を呼ばれた笠松は、目を瞬いた。
「、なんだ?てかうるせえな、静かに」
「それどころじゃない!!!」
何時もはとても穏やかな小堀の様子に、彼も何かを感じ、何事かと問うた。
「今日っ、朝から岸川居なかっただろ?あれ、呼び出しくらってたらしくて…
それで、昼も、」
「、…何だよ」
段々と青ざめていくチームメイトに、いやな予感しかしない。
「階段、西階段にっ、」
「あの人の居ねぇ所か?」
笠松の問いに一つ頷いてから、小堀は意を決したかのように口を開いた。
「呼び出されて…階段から落ちて、血流して倒れてたの、が」
「――…は、?」
何、言ってんだ、オイ。
笑いたいのに、冗談はやめろと言いたいのに、小堀のその表情が現状を物語っていて。
「今、岸川は、」
「森山が付き添ってる、命に別状は無いみたいだけど…」
―森山が?
どうして、なんで、森山なんだよ、オイ。しかも、血って…
そんな気持ちに答えるかのように、小堀が再び喋り始める。
「昼にまで、アイツ…岸川がいないの変に思って…呼び出しされそうな所虱潰しにあたってたら、階段の上に泣いてる女子がいたから、下見たら…」
゛血が廊下に広がってて、そこに岸川が倒れてた゛って。さっき、電話が来たんだ。
「笠松、今日は部活…」
最早小堀が何を言っているのかも、分からない。
(ふざけんなよ、…もう放課後だろうが、何で真っ先に俺に連絡が来ねえんだよ…!!
一番、アイツと一緒に居たのは俺だろっっっ!!!?)
履き替えていたバッシュを脱ぎ捨て、携帯とカバンを乱雑に掴み、一目散に扉へと駆け寄る。
「、場所っ!!どこだ!!?」
突然の笠松の行動に驚いたものの、小堀はしっかりと返事を返す。
「三丁目の、長倉大学付属!!」
「分かった!」
走って、自転車に飛び乗って、目指すは大学病院。
もう何も考えられないままに、足だけを動かした。
「―…」
―なにか、聞こえる。誰だ…?
「―岸川、」
(なんだ、森山か。タオルとドリンクなら其処だって言ってるだろ…)
目蓋が異様に重い。
そもそも、どうして自分は寝ているのだろう。
(あ、そういえば落ちたんだっけ…)
少しずつ少しずつ、外の世界を確かめるように目を開く。
「! っ岸川…っ」
「森山…?なんだよ、おまえ…れんしゅ、どうし」
「それどころじゃねえよ!!バカかお前はっ、チームメイトが傷付いて、あんなに血出してたっていうのに、おまっ、お前…っ」
病室で大声を出していたことに気がつき、はっとして口をつぐむ。涼しげな目元は、少し赤くなっていた。
「…悪い。こんなこと、言いたいわけじゃないんだ」
「…?」
「なあ、いい加減、その口調やめたらどうなんだ。なんか、無理してるだろ」
たまにお前、泣きそうな顔してたぞ。こんな時にまで、やる必要ないだろ。
―まさか、森山に気付かれてしまうとは。
笑おうとしても、体が軋んで上手く行かない。
「それ…笠松、か?」
(―そこまで、)
もう隠しようもなく、只感心する。
「よく、分かったね、森山」
泣きそうな顔をして、森山が笑った。
不器用な、笑みだった。
「二年以上仲間としてやってきたんだぞ、俺だけじゃなくて小堀も気付いてんだよ、バーカ」
胸が温かくなって、どうしようもなく泣きたくなった。
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