二次創作/夢 おまえのせいで女子力が失われていく 「ヒュッ、ヒュウ…」 変な声出た。どうしてくれる。 今日も素敵な晴天である。 岸川朔は爽やかな朝に満足しながら雄英高校にいつものごとく登校した。平穏な一日の始まりである ―…はずだった。 場所は(さすがトップ校、めちゃくちゃ広い)昇降口、時間は早朝六時半。事件は起きた。 「おい」 普通科に属する朔は、己の分を弁えすぎている変人だ。これは普通科の生徒皆の共通認識である。 ヒーロー科の生徒はいわば芸能人のようなものであって、自ら彼らとかかわり合いになろうとは思わない稀有な人物であった。 だから下駄箱にヒーロー科と思わしき(というより絶対にそうである)人物が立っていようが、上履きに履き替えて横を通り抜けてそしらぬふりをしたのである。実にすばらしい流れ作業だった、と彼女は後に語る。 しかし、そんな流しそうめんのようにスムーズな動作も残念ながらヒーロー科の前では無駄だったようだ。呆気なく首もとを掴まれて捕獲される。 「耳ついてないのか」 「………………………ナニカゴヨウデ?」 長い沈黙の後にやっと口を開いた朔は、満足そうに口元を緩めた腐れ縁―轟焦凍にしらけた目線を送った。 ヒーロー科という話題性溢れる人物と接点があるなんて、静かに過ごしたい彼女にとって邪魔以外の何物でもない。今日だって嫌な「予感」がしたから、大して強くもない早朝に登校したのだ。どうやら先読みされていたらしく、残念ながら目の前にいる奴によって今朝の平穏は叶うことはなさそうである。 「今日の」 「はあ」 「昼」 「…はあ」 じれったいなはやく言えよ。 そう思いながらハイライトなんか入っていない目が更に光を失っていくのを感じる。未だに首もとを掴まれた泥棒猫よろしくの姿であるのも非常に気に入らない。 動物愛護精神がお前にはないのか轟ィ…焦凍ォ…… そんな呪詛を送りながら轟からの言葉を待っていると、首もとから肩に手が移って正面からのぞき込むような形にされた。 「…なんなのかね君は」 「朔… 本当はあいつらにお前を見せたいとはけして思わないんだ…しかしあいつらに事実を証明するためにはもうこれしか手段が無い…!嫌わないでくれ、頼む、だが俺もお前を馬鹿にされて黙っているわけにはいかない、これは…いわば戦争だ……!!」 「(なげぇ)」 一人で熱く語り始めた(但し表情はいたって真剣)同級生に、ますます目が生気を失っていく。 さながら今の自分はカラスにつつかれて絶命した鼠のような目かな…ふふ…… と考えていたら、突然原爆が投下された。手榴弾どころの話ではなかった。 「朔、付き合うことを前提に結婚をしよう」 「ヒョッ」 「あ、間違えた…いや間違えていないか…… 朔、昼に俺のクラスへ来てくれ」 「ヒュッ、ヒュウ…」 変な声出た。轟焦凍許さん。 おまえのせいで女子力が失われていく (いやまじで勘弁してくださいむり)(無理とか言わねぇよな、朔…来ないなら…仕方ない)(アアアアアア私のスマホォオオ轟窃盗罪でうったえ、やめてやめて凍らせないで行くからアアアアア) * * * * つぎはたのしいたのしいえーぐみだよ!!(主人公涙目) [次へ#] [戻る] |