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二次創作/夢
奇想天外大波乱












その日、ボーダー本部の一角は混沌とした事態になっていた。


「ああ…ア…ァ……!!!」

「ヤバい辻ちゃんがカオナシになってる!離せ!志島ちゃんから離せ!」

「うわわわ!!あああ!!ごめんなさいごめんなさい!!!辻先輩生きて!!!!」


何?私が何をした?
状況を飲み込めずに一人佇む女―志島絲(しじまいと)は、暴風に晒された風見鶏のごとく激しく回転する赤い数値と、明らかに笑いが隠せず滅茶苦茶振動している数値と、何故か縦になって各方面にお辞儀しまくっている忙しない数値を遠い目で眺めた。隣ではあわあわしながら絲と騒ぐ男三人を交互に見ている黒スーツの女子が立っている。彼女には何も責任はないので気にするなと首を振ったが、下がり気味の眉が更に下げられただけだった。

ことの始まりは、お調子者(佐鳥)の一声だったらしい。
狙撃手合同訓練後のロビーにて、佐鳥はボーダー入隊からそこまで日が立っていないにもかかわらず既に頭角を現している先輩・奈良坂透の姿を目にした。おーいと声を掛けて駆け寄ったその隣には、彼の同級生が立っている。


「佐鳥」

「ああ、佐鳥。お疲れ」

「お疲れ様でーす!お二人はどうしたんです?こんな所で」


佐鳥がまず疑問に思ったのは、特に用がないはずの二宮隊攻撃手・辻新之助がロビーに居たことだ。わざわざ奈良坂に会いに来たのだろうか?そう頭を捻っていると、奈良坂はそんな後輩を見て慌てる辻を余所に実は…と口を開いた。


「志島さんに以前助けてもらったお礼をしたいそうだ。だが一人では話しかけるどころか近付くことすら難しいので、俺に手伝ってほしい…という訳で辻はここにいる」

「はへぇ、なるほど?」

「なんで全部言うんだ…!」

「どうせなら巻き込もうかと思ってな」

「おっ!佐鳥の協力をお望みで?ならドドンとお任せを!おぉーい鳩原せんぱぁーい!!」

「あああすごい勢いで話が広まっていく…!」

「腹をくくれ。
というか鳩原さんはお前の隊だろ、なんで佐鳥は声掛けに行ったんだ?」

「えっ何でだろ」


軽く概要を聞いた佐鳥は、それなら俺の出番!と言わんばかりにすぐさまタッタカターと走り出す。出来る限り人目を忍んでいたかったらしい辻は、空を切った手を下ろしてがくりと項垂れた。難儀な奴だな…と目で語る奈良坂は、遠ざかる背中を見送りつつ同級生の肩を軽く叩く。しかし志島にコンタクトを取りたいのに、どうして二宮隊狙撃手・鳩原未来へ一目散に駆け寄ったのだろうか。そう二人が疑問を抱いていると、何が何だか分かっていない顔をした鳩原を連れた佐鳥が駆け足で戻ってきた。あまりにも行動が早い。


「お待たせしましたー」

「いや全く待ってないぞ」

「うん、すごく早かった」

「えっこれなんの集まり…?」


二宮に冴えない顔とよく評される鳩原だが、この時ばかりは目を白黒させていて表情の変化が著しい。佐鳥にとりあえず来てくれと言われたんだろうな…と把握した奈良坂は、ひとまず事の経緯を説明することにした。


「…という訳なんですが。
佐鳥、どうして鳩原さんを呼んできたんだ?」

「えっ?だって志島先輩と鳩原先輩よく話してるじゃないですか。狙撃手の訓練後とかよく合流してますよ!」

「えっ」

「そうだったんですね」

「うん、絲とは一緒にトリガー研究をやってたりするから…」


意外な所に繋がりがあったことを初めて知り、辻は普通に驚いてチームメイトを見る。実はね…と照れ臭そうに頬をかきながらその理由について話をされ、ああ成程なと腑に落ちた。精密な射撃を得意とする鳩原だが、彼女の抱える弱点(・・・・・・・・)をカバーするためにはトリガーか作戦を変更する必要がある。不確実性を嫌う二宮がいる手前、完全にランク戦で使えるようになるまで周りに漏らすことはしなかったのだろう。道理で自分が知らなかった訳だ、と辻は納得した。


「という訳で、鳩原先輩!間に入ってサポートお願いできません?」

「私は全然構わないけど…辻くんはどうする?」

「じゃあ、お願いします…!」

「そういうことなら俺はお役御免だな。頑張れよ、辻」

「佐鳥は時間あるんでついて行きまーす」


奈良坂と別れてから善は急げと三人が向かったのは、二宮隊の隊室だ。今日は二宮が不在の為、隊室に直接絲が来ることになっていた。辻としても慣れ親しんだ人同伴で隊室ならば女子相手でもなんとか体裁を保てるかもしれない…と考えたので、御誂え向きの状況が整っていたのである。

さて、隊室で彼らを出迎えたのは犬飼だった。ランク戦をしようと思ったがめぼしい相手が見つからず、とりあえず隊室に戻って暇つぶしをしていたようだ。佐鳥を連れてやってきたチームメイト二人に目を瞬かせ、その理由を耳にするとあぁ遂に会うんだ?と楽しそうに体を揺らした。辻に絲のことを教えたのは勿論この犬飼本人であり、うじうじしている後輩が一体いつ絲と会うんだろう、とワクワクしながら待ち侘びていたようだ。頭の中のイマジナリー絲が心底冷たい目をしていても関係ないらしい。


「あ、絲がこっちもう来るって」

「!も、もう来るんですか」

「じゃあ佐鳥が迎えに行ってきますよ!辻先輩は心の準備しといてくださいね!」

「ああっ準備までの時間が短い…!」

「まあまあ。別にお礼言うだけじゃん?身構えるだけ疲れちゃうよ、辻ちゃん」


悲鳴じみた辻の声もなんのその、佐鳥はパッと外へ飛び出していってしまう。胸に手を当てて深呼吸をしようと試みている辻を見て、犬飼と鳩原は仕方ない後輩だなあと視線を交わした。
女子を前にするとどうしても平静ではいられない辻からすると、絲の来訪を待つ時間は短いようで長く感じる。本当に話できるんだろうか…いやでも助けてくれたのにお礼の一つもないのは失礼すぎる…!なんて悶々としていると、扉向こうから人の声がした。ビクッと体を揺らして腰掛けていたソファから立ち上がって固まる姿は、飼い主の気配を感じて扉をじっと眺める犬の動画を思い起こさせる。犬飼は面白!俺今日ここに居て良かったー!とにこやかにそれを眺めた。そんな二人に鳩原は苦笑いをこぼし、氷見が居たらツッコんでくれたのになあとこの場にいないオペレーターを恋しく思う。突然絲が目の前に登場、という展開はまず間違いなく辻が死ぬので、鳩原はひとまず間に入るべく扉を潜った。


「絲、来てもらってごめんね」

「いやいや、やっぱり隊室の方が落ち着くだろうし手間じゃないからいいよ。
というかなんで佐鳥が…普通に呼びに来て連れてこられたしよく分からないんだけど、佐鳥も一緒にトリガー研究するってこと?」

「いやあ、志島先輩に会いたいという人がいるので佐鳥が一役買ったのです!」


鳩原を目にした絲は、や、と片手を上げて挨拶を交わしてから疑問を口にした。それにヌッと首を突っ込んできた佐鳥は、顔の横にキラリと光るものを出しつつふふんと胸を張る。佐鳥の肩上には誇らしげに体を反らしている8万2999の数値が存在を主張しており、なんだか微笑ましい気分になった。もちろん絲以外には見えていないので顔には出さないが、その微妙な数何なんだろうと常々思う。佐鳥らしいと言えば佐鳥らしい。ツインスナイプとかいう訳の分からない技術がしっかり反映されているはずなのに、その値の高さよりも中途半端さが気になる。
対して鳩原の9万2000の数値はカチューシャのように頭に突き刺さっていてなんとも痛そうだが、それはいつものことなのでスルーした。何度も目にすれば流石に慣れる。ゆるゆる揺らめいているので、海中のワカメみたいだななんて思ってない。思ってないったら思ってない。

そんな心中など露知らず、鳩原は自分に会いたい人とは一体誰のことだ?と不思議そうな顔をする友人に笑いを零す。そしてこれからその子呼んでくるから待っててと言い残し、扉向こうに姿を消した。
が、待てど暮らせど中々出てこない。どうも中で何やら揉めているようで、珍しく鳩原が大きめの声を出しているのが聴こえてくるではないか。佐鳥と顔を見合わせた絲は、ますます頭の上の疑問符を増やすこととなった。


「…本当に私と会いたい人なの?」 

「本当ですよ!佐鳥嘘つきません!!」

〈腹括りなって、辻ちゃん〉

〈いや…心の準備が…!!〉

〈辻くん、もう来てるんだよ?〉

〈もう少しだけ…もう少しだけ…!〉

「……」

「……」


聞こえてくる声の中には明らかにいけ好かない同輩のものが混じっている。犬飼もおったんかいと心の中でツッコミを入れるのと同時に、件の人物がもだもだと時間稼ぎをしているのも理解した。いや自分に会いたいとか嘘では?と隣へ顔を向けると、冷や汗をかいた佐鳥がちょっと待ってて下さいね!?と隊室に飛び込んでいく。それからわあわあドッタンバッタンと騒がしい音がしばらく聴こえてきたが、その後ぴたりとそれが止んだ。すごく騒がしかったのに、突然静かになるとそれはそれで怖い。え…?何…?どうしたらいい?と迷ったが、様子が気になった絲は恐る恐る扉に近付いて中を窺うことした。

が、その行動が悲劇を引き起こす。


「だから辻先輩、駄々こねてないでホラ!待たせてるんですよ!!」

「駄々こねてない…!」

「いーやこねてる!!駄々こねですよ!!会いたいって言ったのそっちでしょ!!! あっ、」

「え」

「!?」


絲が忍び寄った瞬間に扉が開き、見覚えのある黒髪男子の腕を掴んだ佐鳥が目の前に飛び込んできた。このままではぶつかる、と二人共悟る。絲と鉢合わせた佐鳥は衝突を回避しようとし、手に掴んでいたものをパッと離して横に避けた。
そこでアッと声を上げてあからさまにマズイという顔をする。それもそのはず、手を離されてバランスを崩した辻と扉前に立っていた絲が真正面に向かい合っていたからだ。あー!!という佐鳥の悲鳴をBGMに、二人は勢いのまま通路に倒れ込んでしまったのである。そして悲しいかな、お互いトリオン体とはいえ辻が飛び込んだのは絲の胸元だ。ふにゃんとした柔らかく頬に伝わる感触、押し倒した体のつくりの違い、本物と聞けば信じてしまうほどリアルに感じられる体温。ピュア過ぎる思春期男子がそれに堪えられる筈もなく、結果としてガチンと固まった辻は真っ赤な顔で母音しか発さなくなってしまった。


「…っ!!ア、ァァ…!!!」

「え、大丈夫…?え?」

「うわわわわあわわ」

「ヒィッ…www」

「二人共大丈夫!?」


これぞまさに大惨事。こういう経緯で冒頭の事態に至ったわけである。

犬飼はひきつけを起こしたみたいな笑いが引かないらしく、佐鳥と共に辻を退かしてくれたのはいいものの、呼吸すら苦しそうだ。その数値は6万1000へと変化しており、何故か絲への好感度が一度に1000も高まったことがうかがえる。上がり方も上がる理由もエグい。明らかに後輩と同級生が不幸に見舞われてるというのに、こんな所で好感度を上げる辺りどこか歪んでいるに違いない。ソファに腰掛けている絲は、鳩原から受け取った茶をすすりつつじとりとした目を彼に向けた。
その向かいでごめんごめんと軽い謝罪をする犬飼の隣には、膝に頭をつけてひたすら謝罪の姿勢を貫いている佐鳥の姿がある。変態技術と名高いツインスナイプの生みの親だからか、8万2999とべらぼうに高い数値がしおらしくその上で土下座するかの如く体を折り畳んでいる。その数であれば威張り散らしててもいいのに、先程のことを心底申し訳ないと思っているらしい。あれは仕方のない事故だったんだからそんな気に病むな、と頭を上げるよう言うと斜め45度まで上体を持ち上げてそこで止まった。まるで殿様に御目通り願う家来の如き体勢を維持しているので、どこまでも律儀な性格である。犬飼お前、隣の後輩を見習えよ。オイ笑ってんなまじで。

ちなみに正気に戻った辻はというと、向かい合うソファの間の机の下で横たわっていた。つまりは四人の足元なのだが誰がどう宥めてもそこから出てこないので、気が済むまでそのままにしている。しかし身長が180近くあるため、長い足が机の端から大分はみ出ていてなんとも笑いを誘う見た目だった。心にもっと傷を負いそうなので誰もそのことについては言及していないが。絲がチラリと目を向けると、6万4000の数字が己を伺っている。絲と目が合う(?)とヒュンッと素早く姿を隠してしまうが、辻が絲と話したいのは本当らしい。絲自身もひと目見てああこの前助け舟に乗ってどんぶらこしてた黒髪くんか、と心当たりがあった。妙にギュインギュインしている数値やHELPエフェクトも未だ衝撃が大きかったので、よく覚えているのだ。


「…さて、黒髪くんのこと辻って呼ばせてもらおうかな」

「!」

「良いんじゃない?皆大体苗字で呼んでるし」

「ならそうしよ。私がニセ二宮さん号令掛けた後、また絡まれたりしてない?大丈夫なら良いんだけど」

「学習したらしくて隊長に呼ばれてるって言って逃げてるって。
そこまで女子相手に頭回るようになったのはいいけど、辻くん派手な子たちに好かれがちだよねえ」

「そりゃ大変だ。肉食系は怖いな」


たははと笑い合う女子二人を見ながら、佐鳥は絲のその相手に気負わせない話し方は流石だなあとやっと背筋を伸ばした。鳩原との雑談で伝えたいことを伝え、辻が切り出したかった話題を提示している。先程の接触事故については言及すると辻が使い物にならないと判断したのか、わざと話題から外しているようだ。どうにも達観したように見受けられがちだが、絲とて年頃の女の子だ。怒っても然るべき出来事だったのに、相手を思いやる行動をするなんて仏なんだろうか。
このように絲を高く評価して拝み始めた佐鳥だったが、絲は辻の件をさっさと済ませてトリガー研究に移りたかったのが本当の所である。面倒ごとを嫌うが故にスルースキルを発動したまでなので、佐鳥はそこまで真剣に拝まなくてもいい。手を合わせてこちらを見つめてくる後輩に対し、絲はそっと忍ばせていたチョコ菓子を渡した。余計に拝まれた。

茶番を繰り広げる二人を余所に、机の下で蠢いていた辻はやっと話す決心がついたのかゆっくり這い出てきてヌルンと上半身をあらわにする。俺はなんてことを!!ワ゛ァ゛!!となりふり構わず机の下に滑り込んだからか、サラサラの黒髪は所々乱れてぐっちゃりしていた。


「……ぁの!………………」

「お、はいはい?」

「お、お礼を……」

「うん」

「ァヒュ」


床に正座して佇まいを直し、死ぬほど勇気を振り絞って本題を切り出す。絲も無理に急かそうとせずに相槌を打って返し、ふとかち合った視線に少しだけ微笑んで返した。すると明らかに変な音が後輩の口から漏れ出たので、絲はちょっとびっくりして鳩原と犬飼を交互に見やる。鳩原はごめんね…今のもダメなんだよ…と言わんばかりに首を振り、犬飼はやっと収まりかけていた笑いがぶり返してヒュゴォッwwと吸引力の高い掃除機のような音を発していた。佐鳥は普通にあっこれですらダメなんです!?と、チョコ菓子で頬を膨らませながら目を丸める。絲にとっての癒しは佐鳥だけだった。

息も絶え絶えにあの時はありがとうございましたという言葉を辻から聞けたのは、それから五分後のこと。
絲はいよいよ筋金入りだなあと後輩の今後が心配になった。自隊の女子とは話せるそうだが、それ以外がダメとなるとかなり生きにくいのではないだろうか。担任の先生とか女性だったらどうするんだろう?という素朴な疑問を抱く。女性との会話がままならないと普通に生きにくそうだ。そんな絲を見た犬飼は、未だ正座を続けている後輩の頭をポムポム叩きながらねえ、と声を上げた。


「志島ちゃんさぁ、かるーいもんでいいから辻ちゃんと会話できるようになってくれたりしない?見かけたら話しかけるくらいでいいからさ」

「エッ」

「私はいいよ?ついでに弧月使う者同士模擬戦とかしてくれたら嬉しいけど」

「よし、じゃあ決まり」

「エッ」

「辻くん…いつかはやらなきゃいけないことだし、ね?」

「辻先輩ファイトです」


己を置き去りに話が進んでいく中、青褪めながら頬を紅潮させるというある意味器用なことをしつつ辻はわたわたと周りを見回す。しかし助けてくれそうな鳩原も佐鳥も、こればかりは…と応援するだけで犬飼の提案をよしとしていた。辻とていつまでもこのままではいけないと分かっているし、思春期なので何なら彼女とかも欲しい。だけど話が急展開すぎてどうにもついていけず、ただひたすら慌てることしかできなかった。そんな辻を上から覗き込んできた犬飼は、ひっそりとこう告げる。


「ね、辻ちゃん。これはチャンスだよ」

「…?」

「自覚ないならそれはそれでいいけどね?
…自分から望んで、んで最初から向かい合って視線交わした相手なんかほぼいなかったじゃん。そういう所から慣れてかないと、一生このままだと思うなぁ俺は」


確かにその通りだろう。人を食ったような言動が多い先輩でも自分のことを考えてくれているのは分かるので、辻はいよいよ腹を括らなければ男が廃る!と背筋を伸ばした。犬飼はそれを見てにっこりと笑みを顔に乗せている。辻は鳩原とトリガーの話をしている絲を見上げ、あの!と声を上げた。かっかと熱くなる頬も今はお構いなしだ。


「しっ…じま、先輩! その…」

「うん」


辻から名前を呼ばれたことに目を丸めつつ、絲は辻に応える。すると案外力強い眼差しで見つめられたので、犬飼に何か発破でもかけられたのかな?と頭の片隅で考えた。全く、良くも悪くも人を動かすのが得意な同級生らしい。


「迷惑じゃなければ、あの、…っお願いします」

「オーケー、こちらこそ。報酬は模擬戦でいいよ」

「!、はい!!」


もとより断るつもりは無かったので軽く了承の返事をすると、パッと視界が明るくなり思わず眉をひそめる。さてこれでトリガー研究に移れると気を抜いた瞬間を狙われたかのようなタイミングだった。
え?眩しくない?と絲がその光源を注視すると、6万4000の数字が後輩の頭上でドゥインドゥイン!!と瞬いている。その音なん…何…?と横目でチラチラ見ていたが、闇夜に滲む虹色のネオンのような光を出していた。この子はつくづく新現象を起こす子だな…と絲はむしろ感心する。そうでもしないと視界のやかましさに心が追いつかないのだ。今日はまだギュインギュイン回ってないだけマシかもしれないと思ったが、チカチカレインボーネオンも中々である。絲の感覚は麻痺しつつあった。

まあそんなこんなで、絲と辻のドキドキ☆トークトレーニングが不定期に開催されることになる。そのおかげで辻は顔や視線を逸らせば女子と短い会話ができるまでに成長するのだが、チームメイト以外でまともに話せる女子は絲だけという結果になるとはーこの時はまだ誰も知らない。


「いやいや、これはむしろ成功って言っていいんじゃない?いいアシストしたなぁ俺」









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