[携帯モード] [URL送信]






嫌だ…。

喩え家が東京圏でも、大の都会苦手だ。
ガクリ、とうなだれる。
その反動で手に持っていた石がコロリ、と転がって行き、天侯さんの手に当たった。
天侯さんはそれを取って、俺に差し出す。

「付いてってやる。」

そう言葉を付け足して。

「……分かりました。行きましょう……。」
雄汰君に病院の住所と待ち合わせ場所と時間を書いてもらった。
「あの……」
言いにくそうに聞く。
「なんでしょう…?」
少しダメージが残ったテンションで返す。
「あの、……お名前、聞いても、良いですか…?」
おや。名乗って無かったか。天侯さんと顔を見合わせた。
「私の名はシュンです。シュンと呼んで頂いて構いません。」
「俺は天侯。様付きで構わ、」
ヒュンッ、とお盆を回転させながら投げた。
「うわ、あっぶねっ!」
素早く左手でお盆を掴まれた。
ちっ。
「何すんだよ?」
「なにが"様付きで構わない"ですか。偉そうに。」
「だって偉えもん。」
「そうゆう問題ではありません。」
「そうゆう問題だろ。」
「……ユウ君、なんて呼んでも構いませんので。例えば、犬とか猫とかでも。」
にっこり笑いかける。
「ははっ……はいっ。ありがとうございます、シュンさん、天侯さん。」
そう泣き笑いをして雄汰君は帰って行った。
もう一度、深々とお願いしますと頭を下げて。

こうして俺達は二日後に東京の都会へと行く事になった。

一人で行く羽目にならずに済んで、大分ホッとした事は心の中での秘密だ。







[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!