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客の名は鴨博 雄汰。高校一年生。雄汰君がこの店に来た理由。それは、幼馴染みが自分を庇って交通事故に遭い、頭を強く打ったらしく、かれこれ1ヶ月間目を覚まさないらしい。
雄汰君がこの店に望む物。

それは、『万能薬』。

───ふむ。
どうしようか。



「誰からこの店を聞いたのですか?」
お茶を音立てずに啜る。
「母から、聞きました。父の時にお世話になった、と。」
─────ん?
「母上のお名前をお伺いしても?」
「君香です。」
鴨博君香……鴨博君香……
──思い出せない。
「天侯さん、覚えていますか?」
今までお茶と茶菓子を無言で食べながら話を聞いていた天侯さんに聞く。
「やっと俺に話の権限くれたか。」
空になった皿をテーブルに置く。
「君香って、あそこのお嬢さんじゃなかったか?あのーほら、あれだ、茶色くてふわっふわっしてる──」
「───パン屋の!!」
そうか、名字が変わったから分らなかったのだ。
「旧姓、三矢ですよね?」
「はい、確かそうだったと思います。」
そうかそうか、ツヤちゃんか。と、すると雄汰君はツヤちゃんの子……。
「──あまり、似てないんですね。」
「はい……。」
これ以上は踏み込むまい。
寂しそうな顔をしている以上、何かあるのだろうが、俺の仕事に関係はない。
「それで代金なのですが、」
「何払っても良いんです!俺の持ってる物なら何でも!!」

「それは…───喩え命でも?」

雄汰君の肩がビクリ、と震える。天侯はニヤニヤしながら俺と雄汰君を交互に見ながらお茶を飲んでいた。

意地悪な事を聞いている自覚はある。

でも、覚悟の程を知るには良い材料だ。


「もしそれが代金だと言うのであれば…──構いません。」


真直ぐな視線が絡み合う。




───まぁ、合格でしょう。



クスリ、と笑う。






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