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「いらっしゃいませ。どういった物をお求めで?」
店内に入ると沢山の骨董品が置いてある。どれも自分の売り物である。中には天侯さんのも幾つかあるが。
「あ、あの……、」
客はきょろきょろと店内を見回していて、俺が来ると吃りながら俯いた。
これはこれは…。
「欲しい物は、なんですか?」
再度の質問。
客は腹を括るかの様に大きく息を吸った。そして、学ランのポケットから小さな石を差し出し、こう言った。
「"おばあちゃんの蜜柑を下さい。"」
やはりそうか。
雷が遠くの方で鳴り始め、ポツポツと雨が降ってきた。
丁度天侯さんが洗濯物取り込んだぞ、と店に顔を出した時だった。
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