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「………代償とは、具体的にどんな物なんですか…?」
震えた声で聞かれた。
俺にはそれに答える義務がある。
悪いけど、少しの間、不安になってもらわなければならない。
それだけリスクのある薬だ。
「今までの例だと色々有るんですが、今回一番損傷が酷いのは頭でした。なので恐らく───記憶が、無くなると思います。何の記憶か、そこまでは分かりません。今まで全てかも知れませんし、二、三年前の事かもしれません。」
一呼吸置く。そして問う。
「それでも使いますか?」
この世に存在するか分からない物を遣うには、それほど覚悟を有する物なのだ。
それもその筈。
人間では決して手に入らない物ばかりなのだから。
人間が使う為に生まれた物ではない物。
それを人間が遣おうとしたら。
喩えどんな危険な副作用があったとしても文句は言えない。
つまり、それだけのリスクを背負わなければならない。
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