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風鈴が凜、と音を立てる。
陽射しが強く、蝉があらゆる所で鳴いていた。

「シュン、手紙来てたぞ。」
淡い灰色の浴衣を着た男の声がかかる。
「誰からでしょう…?」
俺は縁側で読んでいた本を置き、手紙を受け取る。



パサリ。



手紙が落ちた。

俺達の間に静寂が落ちる。

仕方ないので口を開いた。

「また、厄介事ですか…。」
何も言わず、ニヤリと笑った彼奴が憎い。
そして彼奴が言う。

「今度のはなんだ?」
「さあ?まだ開けてませんので何とも。」
「嘘吐け。分かったくせに。」
「解りません。」
「お、知らないふりか?───まぁ良い。」
そう言って顔を寄せてきた。
「ん……、」
チュッと音を立てた軽いキス。


「シュンと居るのは退屈しない。」

顔が離れてクスリ、と笑うのが見えた。
俺は何事も無かったかの様に、手紙を本に挟む。
「──ソレ、読まないのか?」
目敏い彼奴は読みたそうに俺を見る。
だが残念。見せる訳がない。
「後で、読みます。」
念を押すと、チッ、と小さな舌打ちが聞こえた。

「天侯さん、今後の天気は何ですか?」
蓬色の浴衣の皺を伸ばしながら聞いた。
ニタリ、と笑う。

「─────夕立だ。」

なるほど。そうくるか。
「洗濯物、取り込んどいて下さい。」
すると、天侯さんは虚を突いた様な顔をした。こんな切り返しをされるとは思っていなかったのだろう。
「シュン、お前は、」
天侯さんの言葉を遮る様に、風鈴より一オクターブ高い音がけたましく鳴った。


「お客様です。」


にこり、と笑う。

してやったり。







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