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天侯さんは何も言わずに両手を握り締めた。

──血が出る程強く。

この人は不真面目そうで、情の厚い人なのだ。そんな所もとても気に入っている。

──言わないけど。

泣き崩れた雄汰君の頭をそっと撫でる。
「この子の家族には連絡したのですか?」
心を落ち着ける様にゆっくりと声を掛ける。
「れんらく、したら…」

再び溢れる涙。

「もう、うちの子じゃないですから、かんけいありませんって……。びょういんだいだけは、いくらでもだすので、あなたが、みててくださいって…。いろいろ、いそがしいからっ、て……っ!!」
シーツにポタポタと幾つもの染みを作り、皺が出来る程握り締める。
後ろでも怒気を抑えきれず、ポタリと落ちる音が聞こえる。
「そうでしたか……。」
気持ちを落ち着かせる為に、頭を撫でてあげる。
すると、わっと泣き崩れた。







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あきゅろす。
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