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「あ、あの、お一人ですか?」
うざったい。
これで何人目かの台詞を繰り返す。
「これから人に会う約束がある。」
素っ気無く答えた筈なのに、人間の女ども二人は顔を赤くして二人で見合った。
そんな事しても全く可愛いとは思わない。
これをやるのがシュンだったら即いただきますなんだけどな、と有り得ない想像に苦笑が漏れる。
「そ、それまででもいいんで、」
それでも粘ろうとした時だった。
「天侯さぁーん!!」
アイツが手を振りながらこっちに向かって走って来た。
やっと来たな、待たせやがって。
思っても口に出来ない。
後でシュンに怒られるのは勘弁。
「お待たせしました!……お知り合いですか?」
女達を見て不思議そうに言う。
んな訳ねぇだろ。
言う気も失せ、ただ盛大に溜め息を吐いた。
「あれ?シュンさんは…?」
言われて目の前のコンビニを指差す。
ガラス張りだから店内がよく見える。シュンは何人かの男に囲まれ話していた。
少しイラついて、念を送る。
すると、ゆっくりと振り向いて、微笑んできた。

………心臓に悪ィ…。

ドクン、と音を立てて心臓が動き、血がたぎる。
そして、やっぱり好きだ。と自覚するのだ。
でも相手は無意識。
それが時々無性に癇に触る。

仕方ない事だ。


男達を降り払って、コンビニから出て来た。

「こんにちは、ユウ君。」
「こんにちは!暑い中来てくれてありがとうございます。」
ペコリ、と頭を下げて礼を言う。
「いえいえ、こちらから言った事なので大丈夫ですよ。」
蒼い顔してよく言う。
天侯は心の中で呟く。
「それでは行きましょうか。」
「はい!」
こうして三人は病院へと向かった。

いつの間にか、厚い雲が太陽をすっぽりと隠してしまっていた。







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あきゅろす。
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