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「……やっぱり、人が沢山居ますね……。」
はぁ…っと溜め息を吐く。
気持ち悪い。
人酔いだ。
「まぁ都心だしな。──ってか、なんでその格好なんだ?」
不思議そうに問われた。
俺の今の格好は、藍染めで作られた着物。至極上質の物だ。
「なんでって……外に出るから?」
洋服を着ようと言う選択肢は無いのか。
喉まで出かかったが、天侯は抑えた。
ただ、そうか、とだけ言って。
すれ違う人すれ違う人皆シュンを見る。
着物を着ている人が珍しいのもあるが、余りにも違和感なく着物を着こなし、挙げ句にこの美貌。中性的な綺麗さを放ち、黒髪を肩まで伸ばして、それを小さく靡かせている。加え、優しそうに見ながらも鋭い観察力をする双眸の瞳。
これで人を魅きつけない訳がない。
天侯はひっそりと溜め息吐いた。
そんな天侯をシュンは横目で見ていた。
黒い背広を着て、少し緩めたネクタイをして、モデルの様に堂々と存在感を出しながら歩いている。シュン程ではないが、少し伸した髪は、ワックスによって、後ろに靡かせていて、色気が凄い。
先程から纏わりつく視線の理由はこれか、とシュンもふぅ、と溜め息を吐く。
両者とも両方自分のせいで見られているのだという自覚がなかった。
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