16
翌日。
オレはいつものヤツらと、朝から廊下でふざけていた。
すると、他の同級生に交ざって登校して来た龍二が見えた。
ヤツの教室は階段から1番近い。オレは特に気にも留めず、談笑を続けた。
「紫亘先輩、何か言ってた?」
まさかわざわざ近寄って来て話しかけられると思ってもいなくて、かなり驚いた。
「…あァ?つーか、昨夜帰ってねェよ。」
「そう。」
龍二はわずかに左足を引きずるように歩きながら、教室に戻って行った。
「タカ、仲良かったのか?」
先日の件があるからだろうか。仲間も動揺している。
「いや、オレじゃねェよ。アイツ、バスケ部だから。」
「あ、そう言われりゃ浜荻って部活やってんだっけ。」
どこか弁解じみた回答に、自己嫌悪を覚えた。
だが別に、オレが龍二に関わりたくないワケじゃねェ。
むしろアイツがオレを避けている。
にも関わらず、何故オレが後ろめたく感じなきゃならんのだ。
これまたいつものように校舎裏で一服をすませた頃にはもう、日が傾き始めていてオレは長い影を落としながら渡り廊下を歩いていた。
「あ。」
「うぃーっス。」
部活を終えたレイに出くわす。
「紫亘先輩、何だって?」
「はァ?」
なしてそんな、アニキの事が気になる?
「んだから知らねェっつってんべーよ。」
レイはオレを訝しげに見ている。
「それにしてもお前、ヤニ臭えぞ。」
「おォ、そりゃスンマセン。」
そんな立ち話をしていた時、
「あっ、いたいた!曙覧ー!!」
渡り廊下の向こうを歩いていた龍二がオレ達に気付く。
「金、返し行くんだろー!?」
確かにそのつもりで体育館に向かっていた。
「先生、会議で今いないよ!職員室行こうぜ!」
そう手招きされ、連れ立って歩いた。
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