12 「ピーッ!」 とりわけ長い、ホイッスルの高い音。 試合終了だ。 結果は36‐29で負けた。 仕方ないと思う。 プレイヤー全員が整列する中、オレは静かにその場を離れた。 「あッ!?」 自転車がズラっと並んでいる校門の側。 オレは必死に1台のチャリを探した。が、ない。 「マジかよ、帰りやがった!!」 『暴走ナントカ』とかっつーダサいステッカーの貼られた、見慣れたチャリがない。 「チッキショ、どーすんだ!?」 布団から直行したオレは、財布なんか持ってない。 「さすがに歩けねェべよ…。」 オレは体育館に引き返した。 もうほとんどが帰り支度をしているようだった。 良く見ると顧問と龍二の姿はなく、保健室にでも行っているんだと分かった。 「うぃーっス。」 オレはレイの肩を叩いた。 「えっ…、ああ。」 レイはキョロキョロとオレの側を伺う。 「紫亘先輩は?」 「先帰った。んでオレ金ねくてょ、バス代貸してくんね?」 「帰ったって何で!?」 「知らね。」 オレは悠長に右手を出す。 「何でだよ、怒って帰ったのか!?」 「んだから知らねェっつーの。」 部員共が聞き耳を立てている事に気付いた。 アニキが帰った理由なんかより、文無しのオレの心配してくれ。 「ていうか、交通費は部費から出てるから金持って来てないよ。」 [前へ][次へ] |