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それは第4Qが始まってすぐだった。

「10番、トラベリング!」

龍二は味方にパスする予定だったボールを、側にいた相手チームのメンバーに手渡した。

なんだっけ、トラベリングって。体育の授業では実際の試合よりルールは甘いが、コレはあった気がする。

「ボールを持ったまま軸足が動いちゃう事だよ。」

さすが毎日、隣で見てるだけあって詳しいな。女子バレー部。

「ピボットが出来てない。そんな左足痛いのかな…。」

ピボットがなんなのか分からんが、多分足首は相当痛いんだと思う。



ウチの顧問が席を立ちスコアラーに近付く。それがまたファウルになるんじゃないかとヒヤヒヤしたが、まさか先生がそんな事をするはずはない。

そんな事を考えながら向かい側から様子を見ていたら、ボールがデッドになった。

「チャージド・タイムアウト!」

審判がホイッスルを鳴らし、声を出す。

ウチのプレイヤーは瞬時に集まり、作戦会議を始めたようだ。

「この流れじゃ、浜荻君チェンジかもね。ケガしてるし。」

もうすぐ1分、という時、プレイヤー全員が龍二の背中や肩を叩いた。

そこに、熱い激励がこもっているのが見て取れる。

「えーっ、あの足でショット打てるのかな?」



聞けば、これがいつものスタイルだと言う。

大差で勝っているならディフェンスに徹する事もあるらしいが、基本的に第3Qの中盤辺りから一気にオフェンス姿勢に切り替える、と。

だが今回は要となる龍二の負傷により、メンバーも流れがつかめずにいたようだ。

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