8 七不思議≠幽霊?
SL公園。名前の通り公園の一角にSLが展示されている他は、滑り台と鉄棒にブランコがあるだけのそれほど大きくない公園である。
「で、ユーレイの正体なんてどうやって暴くんだよ」
ブランコの上に立ち乗りしているマサが、隣のブランコに座っているアマネに尋ねた。ダイチはマサの隣にあるブランコの柱に寄りかかって立っている。彼女は得意気に鼻を鳴らすと、自信たっぷりで言った。
「分からないことは本人に聞くに限るわ!」
「ばっ、バッカじゃねーの! 聞いて答えてくれるわけねーじゃん!? 相手はユーレイだぜ!!」
「そうだよ、呪われでもしたらどうするのさ……」
七不思議騒ぎの犯人がファイヤーエイダー達とは露ほども知らない彼ら。
後込みする男子2人に、アマネはははーん、と目を細めた。ぎくりと肩を震わせたのを見て、確信。
「アンタ達、怖いんでしょお〜?」
それにいち早く反応したのはマサだった。ダイチは顔をそらして空を見た。
「ちげーよバカ! オレはオカルトは信じねーの!!」
「……………ボクは、怖いかな……」
「アンタらがそんなんだからいけないの!男なら根性出しなさいよ!!」
2人は顔を見合わせて項垂れると、アマネに聞こえないようひっそり溜め息を吐いた。
この後は例に漏れず、彼女に引きずられながら(一番確実であろう)喋る消防車のところまで連れていかれるのだ。
「さあ行くわよ、まずはあの消防車を探すんだから!」
『りょーかーい……』
予感的中、どうして女の子ってこんなに逞しいんだろう?
思っても口には出せない言葉を頭の中でぐるぐるさせながら、2人はふんぞり返って歩く女王を見て、また溜め息を吐いた。
「こんな虫ケラ共、放っておけば勝手にくたばるものを」
眼下に広がる街を眺めてダイペインが呟いた。
「午前中は悪く、午後は宜しい」
焦らないのが先負の鉄則。元々勝負事に向く日ではないが、テイオルドから直々に下された命に背くことはできない。
ゆるく首を回して辺りを見回して、掌に収まっている小さな蟲――ベースギアを見る。頭を過る銀色の鎧。
「気に食わないが仕方ない、使ってやるか。……行けィッ!!」
投げた方向にはマサカズ達のいるSL公園。
ベースギアは機関車に張り付くと、細い触手であっという間に覆い尽くし、何千ものコードが絡まったような塊が蠢き出した。マサカズはふと後ろを振り返り、目を丸くした。
得たいの知れない物体がうねうねと形を変えながら肥大化している!
「なっ、なんだぁ!?」
「またお化けぇえっ!!?」
泣き出したダイチの首根っこを引っ付かんだアマネは般若の如き形相で、
「何言ってんの! 早く逃げないと死んじゃうわよ!!」
ひっ、と息を飲んだ彼を突き飛ばさんばかりの力で押し返して手を離し、またその襟首を引っ張った。3人は慌てて走り出し、後ろを振り向かないようにして全力疾走。少しでも安全な場所に移動するために。
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