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7 七不思議の二つにつきまして、謝罪申し上げます。
 一方『いつもの場所』では、バンテラーがガラクタの上に腰掛けて、開けた入り口から外を眺めていた。

 「青い空、白い綿雲、煌めく波間を翔けるカモメ。ああ、夏と私は美しい……」

 そう言って、どこから出したか分からない彼に見合ったサイズのティーカップに口を付けた。中には紅茶らしき液体がたゆたっている。その後ろには正座させられているロボットが赤、白の2体。

 ここ暫くバンテラーが姿を現さなかったのは、人間に見付かっては一悶着あると考え目立った行動を控えていたからと、彼らを探していたからだ。彼はカップを置くと、つかつかと歩いて2体の前に仁王立ちした。

 「喋るショーボーシャというのは貴方ですね、ファイヤーエイダー」
 「うむ、人間を怖がらせたのはすまないと思っている」

 ファイヤーエイダーと呼ばれた赤いロボットは、あまり抑揚のない平坦な口調で答えた。
 そのせいか、あまり反省の色が伺えない。背中に着いている放水器を模したライフルをいかにも邪魔そうにして、前屈みになっている。胸のエンブレムにはローマ数字のU。

 「だったらその偉そうな口振りはお止めなさい。……さて、子供をさらう赤鬼というのは貴方ですか、レスキューエイダー」
 「そうだと思うけど、失礼しちゃうわぁ! アタシがオニだなんてっ!!」

 レスキューエイダーと呼ばれた白いロボットは、男らしい低音の声ながらも女性のような口調で文句を言った。胸のエンブレムはローマ数字のVを模している。バンテラーは少し顔をしかめたが、今更それが直るとは毛頭思っていないので注意しなかった。
 なので、彼が足を崩して座っていることを注意するに留まった。

 それから二人の顔を代わる代わるじっとりと見てから、長――く溜め息を吐くと、バンテラーは呆れ顔でそっぽを向いた。

 「全く、揃いも揃って何をしているんですかアナタ達は!それと、もう一人はどうしたんですか?」
 「それがねぇ隊長、何故か通信出来ないのよぉ。アタシ達何度もやってみたんだけどさっぱりなの!」

 レスキューエイダーの言葉に、また溜め息。左手を腰に手をあて、右手ですっと外を指差して、落胆を含んだ声で言う。

 「お行きなさい、いつまでもアナタ達を引き止めていたところで得はありませんから」
 「あぁん、相変わらず隊長は素直じゃないんだからっ!」
 「レスキューエイダー」

 ファイヤーエイダーがぴしゃりと言ったので、彼は「アンタもね」と肩をすくめて出入口まで歩いて行った。


 「チェンジッ!」「チェ〜ンジっ」


 消防車と救急車に変形した2体は道路の方へ走っていく。バンテラーはその後ろ姿を見送ってから、レッシングとダージングに通信を入れた。

 『隊長、どうかしましたか?』
 「ガードエイダーが見付かりません。手枷足枷猿轡をしてでも取っ捕まえて私の前に引きずり出しなさい!」
 『りょ…了解だYo…』

 ピ、と通信を切ると、彼はあることを思い出した。

 「そういえば、あの少年とも連絡する手段がありませんね。まあ必要ありませんが……」

 そのうち会うだろうから、と彼はティーポットから新しい紅茶(?)を入れ、カップとソーサーを持って海を眺める。嗚呼、今日も紅茶が美味い。


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