1 事の発端は、今日から?
澄み切った青空、マサカズが訪れたのは港の端にある古びた倉庫。エイダーズの喧嘩も無事に収まり、ほっとした気持ちで足を運んだのだが。
「兄さんの、バカああああああっっっ!!!」
建築兄弟の弟、ダージングの怒号とともに、バンテラーとガードエイダーが一目散に飛び出してきた。一寸遅れて得意の稲妻が走る。
「なっ、何してんだよ!?」
「バッドタイミングですね、少年。しかし説明している暇はありません。行きますよガードエイダー!」
「はっ、はい!」
工場の中に急いで戻る2体に続き、マサカズがこっそりと覗き見る。
中の様子にぎょっとした。いつもバンテラーが座っている貨物はひっくり返り、倉庫の中はあちこち壊れて、破片などが散乱している。更に棒立ちのまま黒焦げになっているファイヤーエイダーを挟んで、自分の得物を構えたレッシングとダージングが言い争いをしているのだ。
こういう場面を「イッショクソクハツ」というのに違いない。仲の良さそうな2人が喧嘩するとは思いがたいマサカズだったが、黙っていても聞こえる会話を聞いて何が起こったかを理解しようと耳をそばだてた。
「私は読書がしたいんです! そんなにギターを弾きたいなら余所でやってください!」
「本読みたいなら明るいところで読めばいいんだYo! だいたい兄貴に向かってそんな口叩いていいと思ってんのかYo!?」
「そんな変なラップかぶれの兄さんなんていりません!」
「俺だって融通の利かないカタブツの弟なんていらないNe!」
どうやら兄弟喧嘩のようだ。取っ組み合いを始めようとする2体を、バンテラーとガードエイダーが引き離す。
それでも火事場の底力とでもいうのだろうか、バランス型のバンテラーはともかくとして、パワータイプのガードエイダーに押さえられながらも両手をがっちりと組み合った。
レッシングを押さえていたバンテラーがいい加減にしろとばかりに声を張り上げる。
「お止めなさいと言っているでしょうが!」
「こいつは俺達の問題だYo!」
「そうです! 隊長のご命令とあっても聞き入れられません!!」
「ああもうこの馬鹿兄弟っ! ファイヤーエイダー何とかなさい!」
「了解した。」
次の瞬間、ファイヤーエイダーの手刀が2体の後頭部にクリティカルヒットした。崩れるように倒れる2体をガードエイダーとバンテラーが抱き抱える。
やっとひと悶着収まった、と3体と1人は安堵の息を吐いた。
「なあ、いったいどうしちゃったんだよ? 2人がケンカするなんてさ。」
「それが私達にもさっぱり分からないんです。」
足元の瓦礫を彼らサイズのほうきで掃きながら、ガードエイダーが言う。塵取りの位置をずらしながら、ファイヤーエイダーも頷いた。
「今朝からこの調子で困っているところですよ。」
ティーカップに口を付けようと持ち上げたが、取っ手が取れてカップが落ち、肩を落とすバンテラー。
「若い盛りとはいえ、いったい何が何やら……。」
屋根にも穴が開いたらしい。天窓のように光の差し込む屋根を見ながら、バンテラーは頬に手を当てて溜め息を吐いた。
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