来客は嵐のように
ダンダン!
ガルバートは父親のツテを思い出し、今そのドアをノックしていた。よく頼ってきたのだから、自分の顔くらい覚えているだろう。中で物音がして、誰かが近付いてくる音がした。ガンガンと何かにぶつかる音。
ゆっくりと開いたドアの向こうには、右腕にチェーンソーを付けた大柄な赤いロボット。
「なにそれ! チョーカッコイー!!」
挨拶も忘れて飛び付いてきたガルバートに、赤いロボットは心底嫌そうな顔をしてきびすを返した。どうもこの手の相手は苦手らしい。
「グランハルト、客だ。」
「分かった、通してやってくれエマージ。」
「グランの兄貴!」
ちらり見えた見覚えのある軍人に駆け寄る。
彼は不思議そうに上から下まで眺め、顎に手をやって暫く考えた。見たことはある、なかなか思い出せない。ようやく合点がいって、手を叩いて海賊の頭を引っ掴んだ。
「バルゾフ親父んとこの坊主か! ひっさしぶりだなあ、元気してたか!!」
「ガルバートだっつの! 元気してたけどさ。兄貴、オレセントラルで宿借りられないから、宿見つかるまでちょっと面倒みてくれよ!」
ガルバートの唐突な頼みだったが、旧友の息子の頼みを断れるはずもなく。グランハルトは彼の頭を荒っぽく撫でて、にぃっと歯を見せて笑った。
「今はどこも身分証が必要だからな。おし、泊まってけ泊まってけ! ヒナギク、飯ー!」
「テメェやっぱり俺のこと飯炊きかなんかだと思ってんだろ! 勝手に食ってろ!!」
このままじゃ飯が食えないかもしれない。
ガルバートは頭を働かせて、何とか機嫌を直してもらう方法を考えた。とりあえず、誉めるのが手っ取り早い。海賊には上手く生き延びるための知恵も必要だ。我ながらいいナイスアイディア。
「兄ちゃんカッコイーな!」
「あったりめーだ! よし、好きなモン作ってやるよ。」
すっかり機嫌を直したヒナギクに安堵の息を吐きつつ、夕飯と宿を確保したガルバートは、早く別の場所を探さなくてはと思案を巡らせた。
出来れば、海辺がいい。
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