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一.諸君、人間による戦争は終わったのだ!
 世界は東国、西国、北国、南国の4つに分かれ、大海の中央に浮かぶ孤島で戦争を繰り返していた。

 やがて人間による戦争は幕を閉じ、人間同士が血で血を洗う争いをすることはなくなった。人間は銃や手榴弾を持って戦地を駈けずり回って人間を殺すことも、戦闘機が雨のように爆弾を投下し無差別に人々を殺すことも、戦車を駆ることも地雷を埋めることもなくなり、女子供や老人が悲しみに咽ぶこともなくなったのである。

 代わりに人々は「大戦機」と呼ばれる巨大なロボットを作り出した。人間の持つ技術は次第に進歩し、はじめは意思を持たず人間が遠隔地から操作していたロボット達に意思を持たせるまでに至り、意思を持った彼らは人間の代わりに「戦争」に投じられるようになった。これが「大戦機時代」の幕開けである。



 それからも人間達は戦争をするためにロボットを開発し続け、世界は巨大なロボット達が戦う「戦争」に熱中していった。各国は国を挙げて大戦機を開発し、政治、経済、メディアなどでの衝突を原因としてことあるごとに戦争を繰り返した。そして時代が進むにつれ、いつしか戦争は人々の日常に溶け込み、メディアで誇張されて放送される戦争の姿はある種のスポーツ観戦や祭りのような意味合いを持ち、大衆を夢中にする娯楽の一つとなっていたのである。

 開拓者達が切り開いた寒冷地、北国。最先端の技術を持つ富の豊かな国、西国。他国の干渉を避け独自の文化を作りあげた東国。そして幾つもの小さな島国から構成される多文化の国、南国。

 各々が大戦機を率いて戦争を続けていた。大戦機は力の象徴であり、技術力を示すステータスであった。銃を撃ち、剣を振り上げ、爆薬の雨を降らせる彼らの戦いは、刺激を求める人間達を熱狂させる。もっと強く、もっと激しく、例え姿形を変えようと、戦争の狂気が人間を駆り立てるのだった。


 物語は戦争最盛期、東国の大戦機研究所から幕を開ける――。





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あきゅろす。
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