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見参!プラズマ合体、ライジング 4


 「テットォ―――――ンネッ!!」



 両腕を広げたダス・テットーネは、三角錐のような形に下半身を変形させた。

 「フハハ! 後は任せたぞダス・テットーネ!!」

 「そうはさせねーYo!」

  ダンッ!

 ゆっくりと回転を始めた敵の肩から降りたイルリッツ目掛けてレッシングが飛び出した。

 「フン! 残念だな、貴様では私を捕らえることはできん。」

 不敵に目を細めると、マントを大きく翻した。ばさりと彼の体を覆う赤にレッシングの手が怯む。

 「それでは私は失礼しよう! ハーッハッハッハ!!」

 「まっ、待てYo!」

 レッシングの手が空を掴んだ。

 イルリッツの笑い声が耳に残るように響き、空間に吸い込まれるように消えていく。赤い光の帯を残して彼は姿はなくなった。

 「元々捕まるなんて思っていません。今は目の前の置き土産を片付ける方が先決ですよ、レッシング。」

 「やりましょう、兄さん!」

 「……おう!!」

 彼の返事に2人か頷き、3人はダス・テットーネに向き直った。


 「テットォテツビィ――――ッ!!」


 ダス・テットーネが高速で回転し始めた。

 時々青白い光が見えるのは、腕から放電しているせいだろう。

 「行きますよ、貴方達は私が合体するための時間を稼ぎなさい!」

 「「了解ッ!!」」

 前に飛び出した二人の後ろでバンテラーが叫ぶ。


 「デイィ――ンロ――ーダ―――――ッ!!」


 低く唸るエンジン音が彼の後方から聞こえてくる。土煙をあげながらデインローダーが突き進んできた。

 バンテラーもそれに合わせて並んで走り出す。

 「トオッ!!」

 彼がジャンプすると、デインローダーの下部にあるブースターが点火し、その上体を持ち上げた。

 バンテラーを収容する部分を展開し、背部の両翼を起こす。

 彼を中に収めると、カバーが降りて頭部が現れた。


 胸のエンブレムがせりだすと、赤い光が尾を引いて鼓動を告げる。



 「あっ、合体ィイ! バアァ――ンテイィッラァアァァ―――〜ッ!!」



 ウイングを広げ、左足を前に出し右手を挙げ、歌舞伎役者のようにポーズを決めた。


 「行くぜぇ鉄塔野郎ぅぉおお!!」

 「隊長危険です!!」

 一気に間合いを詰めてきたバーンテイラーに、クレーンキャノンを連射していたダージングが叫んだ。

 「うおぉおぉぉぉッ!!!」

 聞く耳持たず特攻していくバーンテイラーが彼とレッシングの間を駆け抜けた。

 「バンテ、いやバーンテイラー! ヤバイ! ヤバイって!!」


 「男は黙って特攻あるのみィ! それが嫌なら放り出しちまうぞ坊主ゥウ!!」


「そんな理不尽な話があってたまるかうわぁああぁぁぁッ!!?」

 マサの目の前にあるスクリーンらしきものに映っているダス・テットーネが大きくなっていく。

 「テツビィ―――ッ!!」

 高速で回転する駒となった敵が凶器と化した腕を近づかせてきた。

 バーンテイラーは最後の一歩を踏みしめて飛び上がった!


 「ドリャァアッ!!」


 駒の中心なら回転していないはずだ、と彼は計算していた。

 「隊長! 危ねぇYo!」


 「何っづぁあああ゛あ゛あ゛あ゛!!?」


 ダス・テットーネは自身の弱点を覆うために、軸である頭上にも電磁バリアを張っていた!

 「バーンテイラー!!」

 マサが前に乗り出して叫んだ。

 「今助けるZe! トーンウェイィブッショーッタァ―――――イムッ!!」

 「デルタサンダー―――ッ!!」

 レッシングのエレキギターを模した武器から放たれた衝撃波とダージングの電撃がダス・テットーネの電磁バリアに直撃したが、脆くも弾かれてしまった。

 「弾かれたっ!? に、兄さん…!」

 不安そうに振り向いたダージングに、レッシングは黙って頷いた。

 「へへっ、やるしかねーみてぇだYo!」

 にんまり笑んだ兄に、ダージングは力強く頷いた。

 「はいっ!」


 「行くZe、合体だ!!」


 2体が互いの右腕をクロスさせた。

 そして高く飛び上がると、レッシングの頭部が収納され足が折り畳まり、背部と合わさり上下が反転する。

 ダージングも頭部を収納し、両腕と腰部パーツを収納すると、レッシングと合体した。

 頭部がせり出し、ダージングの背部に収納されているシールドが胸部に接続されると、両腕と両脚にパーツが合体した。

 緑色の光が瞳に灯ると、胸に輝く『雷』の文字を模したエンブレム。



 「プラズマ合体! ライィ―――ッジングッ!!」



 エネルギーの満ちる両腕を振るい、ライジングが地に降り立った!!

 「今助けるぜ、バーンテイラー!」

 ライジングが肩のクレーンキャノンを構え、照準を定めた。

 「食らいやがれぇッ!!」

  ドギュンッ!

 「テットォ〜…。」

 緑色のビームがダス・テットーネの横っ腹を貫いた!

 回転が徐々に止まり、空中で捕まっていたバーンテイラーが落ちてきた。

 「ア、助かったぜぇライジング!」

 「なーにお安いご用だ。さっさとやっつけちまおうぜ、バーンテイラー!」

 「おうともよ!コイツは釣りだ、取っときねィ!!」

 よろよろと立ちあがるダス・テットーネの顔面にバーンテイラーが拳を食らわせた。敵は大きくのけ反ったが、左足で踏ん張り転倒を避ける。

 だが、追い討ちをかけるようにライジングが飛び出し、サウスポーラリアートを繰り出した。

 「テン…トォオ―〜〜ッ!?」

 ぐらりと揺らいだダス・テットーネに、ライジングがさらに構えた。


 「ハァァアァァァ……!!」


 腰に据えた両拳に、金色の光が走る。

 そして両腕を突き出し、胸の前で光を圧し潰すように掌を握り合わせた。

 目を見開き、ダス・テットーネに照準を合わせ、背部ブースターを点火させて一気に間合いを詰めていく。


 「プラズマバァアァアア――――ンンッ!!!」


 ライジングの腕が電撃と共にダス・テットーネのボディを貫いた!

 拳を引き抜き、彼はその場から飛び退く。

 

 「リュ―〜トオォ―〜〜ダビイィィ――〜〜〜ッッ!!?」



 敵の爆発を見届けると、爆風を背に受け振り返る。


 「任務、完了!」


 「か……っっっこいぃぃ―――!!!」

 バーンテイラーの中のマサが目を輝かせて歓喜の声を挙げた。

 「ア、今回はァ、トリァ譲ってやったんだよォ!」

 見せ場は残しといてやったんだ、と彼は得意気にからからと笑う。





 アレストフィールドが光の粒子となって消え、晴れた空の下、いつもと変わらない街並みが現れた。

 「すごいや!レッシングとダージング、合体できたんだ!!」

 合体を解除した2体にマサが再度言う。

 「ったりまえだYo? 兄弟なんだから、力合わせるのはあったり前なんだZe!」

 「こっちに来てからは初めてだったので、上手くいくか心配だったんですけどね。」

 自信満々に笑うレッシングは対称的に、ダージングは苦笑いをこぼした。

 「するんだったら勿体ぶらずに最初から合体なさい。」

 合体解除していたバンテラーが腕を組みながら不満を述べる。

 「仲間がピンチの時に助っ人から現れる、って燃える展開だYo?」

 にぃ、と笑むレッシング腹部にバンテラーの正拳突きが飛んだ。

 「お黙りなさい!」

 「た、隊長そんなに怒ると小じわが増えますよ!」

 すると彼の右足がダージングの股間を蹴り上げた。

 「〜〜〜〜――!!!」

 彼は言葉も出ずにその場にしゃがみこむ。

 「兄弟揃って海に沈みなさい!」

 バンテラー、ロボットなんだから増えるシワもないじゃないか。とマサは言いたかったが、踏み潰されたらたまったもんじゃないと思い、言葉をそっと胸の内にしまった。


 「マサ――!」


 声に振り向くと、ダイチとアマネが走ってくるのが見える。

 「おう!」

 「バカマサ! アンタホントにバカなんだから心配させないでよ!!」

  バチン!

 アマネの平手打ちがマサの頬を赤く染めた。

 「あっ、アマネちゃん…マサ、大丈夫?」

 「あたしもう帰るからね!」

 そっぽを向いて踵を返し歩き始めたアマネを、マサとダイチはポカンと眺めていた。

 「女の子ってさあ、たまにすんげぇわかんねーよな。」

「そ…そうだね……。」

 「とにかく、もう用事も済みましたから帰りますよ。チェンジ!」

 ビークルモードに変形したバンテラーに乗ろうとマサが近付くと、ドアにロックがかかる音がした。

 「えっ、ちょ!乗せろよバンテラー!!」

 「少年、私は帰るとは言いましたが乗せるとは言ってませんよ。電気の大切さが分かったのなら徒歩でお帰りなさい。」

  ドゥルン、ドゥルン! ブロロロロロロ……。

 遠ざかっていく黒いボディとエンジン音を見ながら、二人はかっくりとうなだれた。





 「イルリッツも失敗したか。」

 モニターを眺めていたテイオルドが低い声で呟いた。

 「私の邪魔をするのなら、いくらお前でも許さない……。」

 目を細め、忌々しい黒いロボットを睨み付ける。

 「必ずやスクラップにしてくれる…!!」

 怒りの言葉と共に、座っていた玉座のひじ掛けを握り潰した。

 カツ、と足音にダイペインが振り返る。彼は玉座の間の外でテイオルドの様子を見ていたのだった。

「テイオルド様は今非常にお怒りだぞ。」

「貴様に言われなくとも解っている!」

 マントをなびかせ歩いていったイルリッツが、出入口で足を止めた。気圧されたか、とダイペインは考えた。

 「怖じ気づいたか、銀メッキ。」

 「テイオルド様の怒りをお静めすることも出来ず、ただここで眺めていた奴に言われる筋合いはないと思うが?」

 鼻で笑うとそのまま前へと歩んでいった。

 「……若造に、一本取られるとはな。」

 自嘲気味に笑った彼は、踵を返して闇へ消えた。


→To Be Continued!





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あきゅろす。
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