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見参!プラズマ合体、ライジング 2
 ユタカの親方こと太井源五郎が率いる家屋の建設現場では、レッシングとダージングがその手伝いをしていた。

 「おーい、ダーちゃん! ちょっとそこの角材2、3本持ってきてくれぇ!」

 「オヤカタさん! 私はダーちゃんではなくダージングです!! それにちゃん付けはやめてください!」

 クレーン車形態のダージングが紐で纏められた木材を動かしながら抗議した。親方は豪快に笑ってあっさりとそれを一蹴した。

 「何だっていいじゃねーか、若造がカタイこと言ってんじゃねーよ! ヒヨッコのおめぇさんにゃ、ちゃん付けがピッタリだ!」

 ダージングは納得いかない様子だったが、どうしようもないことを理解すると、諦めのため息をついた。

 「Yoダージング! オヤカタに負けちまってるみたいだNe〜!!」

 上機嫌な声が少し離れたところから聞こえた。地ならしで働いていたレッシングだ。ショベルカーの彼は一足先にお役御免となったようで、現場の端の方で待機していた。

 「人事みたいに言わないでくださいよ兄さん! 私は真剣なんです!」

 ウインカーを点滅させながらダージングが言った。兄は「ハイハイそーですNe」と軽く受け流してそっぽを向いた。

 「おいおいお前ら、あんまりケンカすんなよ。」

 缶コーヒーを持ったユタカがダージングに言う。

 「………分かりました…。」

 とは言ったものの、その声には不満が山ほど詰まっていそうだった。


 「お―――いっ、レッシング――! ダージング――――ッ!!」


 遠くから呼ぶ声がして見てみれば、ランドセルを背負ったまま走ってくるマサの姿があった。関係者以外立入禁止の看板の前で止まり、手を振ってまた二体を呼んだ。

 「マサくん、どうしたんですか?」

 比較的近くにいたダージングが進み出た。

 「ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ! バンテラーにも連絡して、七浜海岸の古倉庫に来てくれ、って伝えてくれよ!」

 肩で息をして呼吸を整えながら、マサは大急ぎで伝えた。

 「二人とも、なるべく早く来てくれよな! ユタカ兄ちゃん、オヤカタさん、ちょっと二人借りてくよ!」

 それじゃ! と子供ならではの身の軽さで、その後ろ姿はあっという間に小さくなってしまった。

 「……まあ、お前らにゃもう仕事もねぇしな。晩飯までにはちゃんと帰ってこいよ!」

 親方が飽きれたような笑っているような、微妙な顔で言った。

 「センキューオヤカタ! そんじゃちょっくら行ってくるZe!」

 レッシングがエンジンを始動させて真っ先に出発した。

 「ま、待ってくださいよ兄さん!」

 慌ててダージングも後を追う。砂埃が舞う現場を残して、二機の建設車はすっかり見えなくなった。

 「………大丈夫かねぇ…?」

 煙管をくわえた親方が頭を掻きながらぼやく。

 「まあ、あいつらもでっかい子供みたいなもんスから……。」

ユタカは苦笑いしてコーヒーを飲み干した。親方は妙に納得して笑った。

 「ははっ、そりゃあちげぇねぇやな!」





 マサが走ってくると、そこにはダイチとアマネ、それからビークルモードのレッシングとダージングがいた。

 「マサぁ〜、また遅刻〜?」

 ダイチが口を開く前にアマネが口を尖らせて文句を言った。言いたいことは同じだったらしく、彼は口をつぐんだ。

 「車より早く着くわけねーだろ!!」

 「確かに、おチビの足じゃ俺達より先にここに到着することは不可能だYo!」

 レッシングが笑いを含んだ声でフォローになっていないフォローをした。

 「何だよレッシングまで! ……ん?」

 ふと口うるさいのがいないことに気がついた。いるならこの調子で便乗してくるはずなのに、もしや。

 「あ――っ! バンテラー呼ぶの忘れただろ―――っ!!」

 ぶすくれるマサにダージングが慌てて理由を話した。

「れっ、連絡はしたんです! 通信記録もあります! ですが『そんなくだらないものに付き合えません』と言って、取り合ってくださらなかったんです……。」

 しょげ返るダージングを励ますようにアマネが切り出した。

 「ねぇねぇマサ、二人のコト紹介してよ! あたしたち何にも知らないんだから!」

 「うんっ、ボクも知りたい!」

 レッシングが咳ばらいをして、キャタピラ一回転分前に出た。

 「俺の名前はレッシング! シュミはギターとバンド! 何か困ったコトがあったら俺ンとこに来いYo! ヨロシク頼むZe! …ンで、こっちは弟の…。」

 「ダージングです。私たちは今、建設現場のお手伝いをしています。好きなこと…というには語弊がありますが、地球について学ぶことが楽しいです。以後お見知りおきを!」

 二体は礼の意味を込めて、それぞれショベルとクレーンを下げた。

 「あたしは倉坂アマネ! ヨロシクね二人ともっ!」

 「えっと…ボクはダイチ、菅原ダイチっていうんだ、よろしく!」

 「んーでっ! オレは岩浪マサカズ! わかってると思うけど、マサって呼んでいーぜ! ヨロシクな!」

 考え方が似ていたのか、三人と二体は思ったより早く打ち解けることができた。それなりに落ち着いてきたところで、マサが本題に入った。

 「よっし、じゃあ今回の立之山アドベンチャーズの冒険は――。」

 「Heyマサ坊! チーム名がダサいと思うZe!」

 レッシングが横槍を入れた。

 「何だよレッシング! じゃーおまえが考えてみろよー!!」

 「任せろYo! こう見えて俺は『名付けのマイスター』って呼ばれてるんだZe!」

 しばらく沈黙が続いた。

 さして期待していないマサと、期待はしていないが興味ありげなダイチ、目を輝かせて期待大のアマネ。

 ダージングの表情はビークルモードのためさっぱり検討がつかないが、「やめてくれ!」とでも言いたげなオーラが滲み出ている。

 「よし! 思い付いたYo!!」

 一呼吸置いてから、声高らかに言った。


 「 爆 裂 ☆ 辺 境 ナ イ ツ w i t h エ レ ク ト リ ッ ク サ ン ダ ー ! ! ! 」


 「なにそれぇ!ダッサ―――イッ!! レッシングってマサよりセンスなーいっ!!」

 開口一番、信じられないとばかりに全力でそのネーミングセンスを否定するアマネ。

 「なんだよおまえの方がダサいじゃん! 人のこと言えないだろーっ!? つーかアマネ! さりげなくけなすなよな!!」

 てゆーかオレの方がセンスあるし!とまくし立てるマサ。

 「うーん、それは…ちょっとなぁ……。」

 かける言葉を見つけられずに苦笑いするダイチ。

 「兄さん、エレクトリックもサンダーも電気に関する言葉ですから、どちらかにした方がいいですよ。全体的にセンスのかけらもないですが。」

 冷静にツッコミを入れるダージング。フォローの言葉は全く意味をなしていない。とどのつまり、感想は万場一致だったということだ。

 「いいじゃねーかYo! カッコイーだろ!?」

 なおもこの案を押してくるレッシングに、3人と1体は顔を見合わせた。結論は、無視。


 「とにかく! 今回はこの停電について調べるんだ!」

 「でも、停電ってすぐに直るものじゃないんですか? わざわざ調べなくても、担当者とかが直すのでは。」

 ダージングが一般論を出した。

 「う、…。」

 マサは返事に詰まり、ダイチの方に視線をやった。彼は困った顔をしたが、とりあえず何か言わなければと口を開いた。

 「まあ、えーと、ほら! いつもは半日もあれば復旧するのに、まだ直る気配もないからだよ!」

 「なるほど…それでは確かに変ですね。」

 適当に言ったが納得してくれたようで、彼はほっと一息ついた。

 「よっしゃ! そーと決まれば話は早い!みんなで冒険開始だぁっ!!」

 マサが拳を振り上げると、みんなは声を合わせて返事をした。


 『お―――っ!!!!!』


 「でもこれって冒険じゃなくて調査じゃ……?」

 というダージングの呟きは期待と楽しみのざわめきに掻き消された。





 イルリッツは町外れにある送電鉄塔の頂上から街の様子を眺めていた。昼間なので明かりの有無はわからないが、心なしか静まり返っているようにに見えた。

 「我が策にまんまと引っ掛かるとは、ニンゲンとはつくづく愚かな生き物よ。この策は既に成功していると言っても過言ではなかろう!」

 ゆっくりと満足げに頷いて、己の完璧な作戦に酔いしれる。感動の余韻に浸りながら、イルリッツは空に手を伸ばした。

 「作戦とは、迅速に! 効果的かつ完璧に! そして華麗に行うものだ!! あの青大将に解らせてやらねばな…フフフフフ…ハーッハッハッハッハッハァ!!」

 高らかに笑っている彼の下で、鉄塔が大きく揺れた。

 「ニンゲンとやらは“デンキ”がなければ生きられないという。ならばそれを片っ端から奪い尽くすのみだ!!」

 イルリッツが急かすように踏み付けると、黒い電流がほと走った。

 鉄塔がぐにゃりとねじ曲がったように見えたかと思えば、次の瞬間には膨れ上がり、巨大なロボットに変化していた。

 細長い身体を支えるニ本足は、鋭い鉤爪のように尖った爪先を地面に突き刺すようにして立っていた。

 イルリッツはすぐさま飛び降りて命令を下す。


 「やれ、ダス・テットーネ!!」



 「テットォオ――――――――テツビィイ――――――ッ!!」



 ダス・テットーネはゴム板のような柔軟性の高い腕を空に突き出した。すると、どこからか飛んできた青白い電気の流れがその腕に集まり始めた。


  バチッ! バチバチッ!! バチッ!!


 激しい音を立てて電気は腕から身体に流れ、超高圧電流としてその体内に蓄積されていく。

 「あと数時間もあればあのちっぽけな街は街としての機能を完全に失うだろう。そこを攻め落とせば拠点の完成だ!ハーッハッハッハ!!!」

 「テット――――――――――ッネ!!」

 より激しく火花を散らすダス・テットーネから、一本の送電線が切れ落ちた。それはイルリッツの頭の角飾りに引っ掛かった。


 「ん?」


 一瞬の間を置いて、2万ボルトを超える電流が全身を駆け巡った。


 「ッギャアァァアアアアア!!! シビレッ! シビレル――――――――ッ!!!!!!」


 「テットン?」

 激しくのたうちまわるイルリッツに気が付いたのか、ダス・テットーネは電気の吸収を止めた。



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