[携帯モード] [URL送信]
登場!イカズチの兄弟ロボット 4
 「ビ…ビルゥン?」

 「馬鹿者! この程度で怯むな!! 行けっ!」

 景色が変わり不安げにキョロキョロと辺りを見回すビルゲルビを、イルリッツが怒鳴った。

 「今だ!バンテラー!」

 「少年! 貴方はまた勝手に入り込んで…!!」

 「だから少年じゃなくてマサ! とにかく細かいことはナシナシ! ちゃっちゃとやっつけちまおうぜ!」

 バンテラーはビークルモードに形態に変形して、足元に駆け寄ってきたマサを乗せた。

 「好奇心ばかり先立って。これだから人間はどうしようもない生き物だというのですよ!」

 バンテラーがエンジンをかけて移動しようとした瞬間、ビルゲルビが両腕を振り上げた。それに気付いたレッシングとマサが慌てて声をあげた。

 「隊長!前ッ!!」「バンテラー、前!前ッ!」


 「ビルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!」


 バンテラーは素早く変形して、背中に手を回して剣を取り出し、振り下ろされた拳を受け止めた。

  ズザザッ…!

 相手の攻撃の反動で思わずあとずさったが、彼はそれに怯まず悪態を吐いた。

 「さっきから口を開けばビルビルビルビル煩いんですよ! 馬ァ鹿の一つ覚えもいいところですねぇええッ!!」

 ビルゲルビの拳を剣で弾き返すと同時に後退した。

 「デインローダァァァ――ッ!!」

 名前を叫ぶと、ビルゲルビの調度後ろの空間がぽっかりと開いてデインローダーが現れた。

 「ば、バンテラー! あのままじゃデインローダーが…!!」

 「ええ、これでいいんですよ。問題ありません。」

 デインローダーは真っ直ぐビルゲルビの方へ向かって飛んでいくのを見て、慌てるなという方に無理がある。


 予想通り、デインローダーはビルゲルビに衝突した。


  ガイィィィィィィ………ィィィン……!


 重量のある金属同士がぶつかって鈍い衝突音が響いた。

 「ビルゥゥ――ン……。」

 「ば、バカ! 倒れるな! 踏ん張れぇええ!!」

 イルリッツの悲痛な叫びもむなしく、デインローダーのタックルでバランスを崩したビルゲルビは目を回しながら倒れた。

 もしデインローダーに会話する機能があったなら、こんなことをさせた彼に非難轟々だっだだろう。横倒しになったその姿には哀愁さえ感じられた。

 「相変わらずモノ使いの荒い隊長だYo……。」

 「兄さん、それは分かってても言わない約束ですよ。」

 何をするわけでもなく立ち尽くしていたレッシングとダージングが呆れ半分に言った。

 バンテラーの地獄耳がそれを聞き逃すはずもなく、赤い目が兄弟をキッと睨み付けた。2人は「ひいぃっ!」と小さな悲鳴を上げてお互いに抱き着いた。

 「分かれば宜しい。…デインローダー!」

  ギンッ!

 力強く前方のライトが光るとデインローダーはバーニアを点火させて体制を持ち直した。


 「ハァッ!!」

 バンテラーが飛び上がり、その横をデインローダーが駆け抜ける。

 上部のウイングが展開し、完全に起き上がり鎧のようになったところに、ビークルモードのバンテラーが納まった。

 額のアンテナが左右に開き、胸のエンブレムが輝くと、朱い瞳に光が灯る。


 「合体完了!! バァァァァァンッテイィィルァァァァァァァァ!!!」

  ダダンッ!

 「あッ、この華の大江戸八百屋町で悪事を働こうなんざァふてェ野郎だァ! お天道様が許してもこのバーンテイラーが許しゃあしねぇ!! さぁさぁ大人しくお縄につきやがれってんでェイ!!」

 首を回し片手を前に突き出し、足を踏み鳴らすと、歌舞伎役者のようにポーズを決めた。

 「レッシング! ダージング! オメェらの出番だ!!あのスケコマシに目にもの見せてやんなァ!」

 「イエッサー!」「了解!」

 ですますの丁寧な口調からお江戸のべらんめぇ口調に豹変したにもかかわらず、この兄弟は全く動じなかった。

 なんですんなり受け入れられるんだろう。そうか、きっと慣れなんだなぁ。

 何となく、納得。などとマサが考えていると、目の前の画面にバーンテイラーの顔が映った。

「おいボウズゥ! 何ゴチャゴチャ言ってんだァ?  そんなこっちゃぁ寝てるうちにジジイになっちまわぁ!」

 かんらからからと高笑いするバーンテイラーに、マサはがっくりと肩を落とした。

 「やっぱりなーんかイメージと違うんだよなぁ…。」


 マサとバーンテイラーがそうしている間にも、レッシングとダージングはビルゲルビに向かって突進していた。

 「グッ…3対1とは卑怯だぞ貴様らッ!!」

 ビルゲルビはよろよろと体制を立て直しながら立ち上がった。

 「オイオイ、敵サンの言う台詞かYo? オテントーサンが笑っちまうZe!!」

 レッシングがイルリッツの目の前まで迫った。背中に手を回し、ギターを取る。
 イルリッツは一歩退き、その場から飛びのいた。

 「生憎私は貴様らとママゴトをする気はないのでな。後は任せたぞビルゲルビ! ハーッハッハッハッハッハッ!!」

 バサリとマントをひるがえすと、そこにイルリッツの姿はなかった。

 「あっ! …クソッ、あの銀メッキまんまと逃げやがったYo!」

 「ビルウゥゥゥゥウゥウンッ!!!」

 ビルゲルビが両腕を左右に広げ周囲をなぎ払った。

 「おっとォ!」

 寸手のところで上に避け、そのまま後ろに回り込む。

 「ダージング! コイツをこのまま挟み打ちにするze!!」


 「了解! デルタサンダァーッ!!!」


 両腕と胸のエンブレムの三点から三角状の電撃を放った。

 「トーンウェイィィブ…ショーッタイィームッ!!!」

 ギターから放たれた衝撃波が空気を震わせながらビルゲルビに真っ直ぐ向かって行く。

 「ビルッ!!」

 二つの攻撃が当たろうとしたその時、ビルゲルビのボディは空洞を作った。平面を内側に折り畳むことで直撃を回避したのだ。

 それぞれの攻撃はビルゲルビを通り抜けて反対側に命中した。

 「「うあぁぁぁッ!!」」

 ほぼ同時に二人の悲鳴がして、周囲の床が砕け散り粉塵が辺りを覆い隠した。

 「ビルゥン?」

 視界を遮られたビルゲルビは敵を探して周りを見渡した。しかし塵や埃によって空間を厚く覆い隠しされた状況で敵の位置を正確に読み取ることは出来ないようだ。

 「どおぉぉぉぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」

 煙の中からバーンテイラーがビルゲルビに体当たりを食らわせた。3度目になれば流石に学習したのか、両足で踏み止まってバランスをとった。

 すると煙の中から手が現れた。

 「このデカブツ! 動くんじゃねーYo!!」

 バーンテイラーの方に向き直ろうとするビルゲルビをレッシングとダージングが横から押さえ付けたのだ。

 「さあ隊長、今のうちです!」

 「あッ、かたじけねぇ!!」

 バーンテイラーはビルゲルビから距離をおいてムラマサソードを抜き取った。



 「はああぁぁぁぁぁ……!!!」



 刀を構え、気を溜める。

 数歩走ると足裏のバーニアで一気に加速して間合いを縮めた。


 「大ィ文字、斬りいぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!!!」


 勢いに乗せて素早く左右斜めに切り付け、仕上に横に一線。

 そのまま横を通り抜け、刀を脇さしに納める。

 ビルゲルビの身体がずるりとずれた。


 「ビッルウゥゥゥゥゥゥゥゥゥウン!!!!?」


 爆発を背に、バーンテイラーが目を見開いた。



 「あッ、これにて一件落着ぅう!」





 アレストフィールドが消え、もとのオフィス街が現れる。バンテラーが合体を解除して2体のロボットの前に立った。

 「道中お疲れ様でした。まあ、貴方方がいなくても十分でしたがね。」

 あからさまな物言いにマサが彼の足を蹴った。

 「何するんですかアナタはッ!!」

 「ありがとうとか言えないのかお前は!!」

 その言葉にバンテラーはぐっと詰まった。非は認めなければならないが、それは彼のプライドが許さなかった。

 「私の勝手でしょう!」

 マサが怒鳴り散らそうとした瞬間、遠くから声がした。

 「おいおい、ケンカはよくないぞ?」

 瓦礫の山を乗り越えてやってきたのはユタカだった。

 「ユタカにーちゃん!」

「何だか知らねーけど、助けてもらったんならそいつらに感謝しねーとな。それが礼儀ってもんだろ?」

 バンテラーは苦虫を噛み潰したような顔をした。

 「貴方には、関係ありません!」

 そしてビークルモードにチェンジすると、そのまま砕けたコンクリートが散らばる悪路を走っていった。

 「すみません、悪い人ではないのですが…」

 「ははっ、隊長はお説教されんのがキライなんだだYo。」

 苦笑いを含みながらダージングとレッシングが謝った。

 「レッシングもダージングも、あんなヤツと一緒にいることないじゃんか。」

 二体は痛いところを突かれた、とでも言いたげに苦笑いを返した。ふて腐れる彼の頭をユタカの手がくしゃりと撫でた。

 「そう言うなよマサ坊。アイツだってちゃんと分かってるはずさ。」

 「………うん。」

 マサは渋々頷いた。

 「ところで、お前らは行くアテあんのか?」

 レッシングとダージングは顔を見合わせた。

 「そういやぁ…。」「全然…。」

 がっくりと肩を落としてうなだれた二体に、ユタカはにっこりと笑って言った。

 「だったらうちの会社に来いよ! 俺が親方に話つけてやるからさ!」

 「ほっ、本当かYo!」

 「ありがとうございますっ!」

 2体はぱっと顔を輝かせた。

 「2人ともよかったな!」

 「たーだーし! もしオーケーもらったらちゃんと働いてもらうからなぁ?」

 「分かってるYo!」「はいっ!」

 楽しく嬉しそうな3人を見て、マサはバンテラーが走っていった方向を見た。

 もう既に彼の姿はない。素直になればいいのに、と誰もいない道路に向かってぽつりと呟いた。

 「ほら、帰るぞマサ!どうせまた母さんに連絡なしで遊びに出たんだろ。」

 マサは口を尖らせてから笑顔で答えた。

 「チェッ、ユタカにーちゃんは何でもお見通しなんだもんなー。」

 「ははっ、お前の考えることは俺と似てるからな!」

 「じゃーユタカにーちゃんもまだまだガキでやがんのー。」


  ゴツンっ。


 ユタカの拳がマサの頭を殴った。

 「ってーぇぇぇぇえええ!!」

 「自業自得だ!」

 ドタバタと殴り殴られ叩き叩かれとまるで兄弟のようにケンカしているマサとユタカの様子を見て、レッシングとダージングは可笑しくなって笑っていた。

 最後にはつられてレッシングとダージングも笑う。

 明日も楽しい一日でありますように!


→To Be Continued!


前へ

4/4ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!