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登場!イカズチの兄弟ロボット 3
 バンテラー達が苦い思いをしている間に、建設現場では一通り作業を終えたユタカ達が休憩していた。

 「今んトコ順調に進んでてよかったですね、親方!」

 「ああ、そうだなァ。」

 缶ジュースを渡しながらユタカが言うと、ねじり鉢巻きに藍色のはっぴを着た親方はくわえ煙草をしながら答えた。

 「しかしこの辺もビルが随分増えたもんですね。俺がガキの頃はここらは空き地ばっかで、よく近所の連中と遊んでましたっけ。」

 ユタカは懐かしそうに辺りを見回した。空き地だった場所は、今となってはどこもビルや住宅地になっている。

 だから仕事にありつけると考えれば嬉しいが、昔遊んだ場所が消えていくのは心なしか寂しかった。

 「何若ぇ奴が語ってんだよ。」

 ふーっ、と白い煙を吐き出しながら親方が笑って言った。

 「はは、すんません。 ダチ…っていうか、弟分っていうか、会ったらなんか懐かしくなって。」

 「あのちっちゃいのかい?」

 「ウチでよく預かってた子なんすよ。結構気が合うんで、今でもたまに遊んでるんです。」

 「おめぇさんは就く仕事間違ったんじゃねえかい?」

 「いやぁ、ここに就く前は保育士になりたかったんですけど…。」

 照れ笑いしながら小さな声で話すユタカの言葉はそれ以上聞き取れなかった。


 ズシン…と地響きのような低い音が聞こえた。


 「ん? ……おい、何か音しなかったか?」

 親方が顔をあげたてユタカに尋ねた。

 「耳鳴りじゃないんですか?」

 「バーロゥ! 俺ん耳はまだモーロクしちゃねぇ!!」

 親方は立ち上がってユタカにつかみ掛からんばかりの勢いで怒鳴った。

 「おっ、親方! ユタカ!にににっ逃げろ早く逃げろッ! びびびびビルのばばっバケモンが出たぁああッ!!!」

 隣で建設中のビルで作業していた作業員が慌てふためきながら走って来た。

 「ハァ?」

 ユタカは眉をひそめて作業員が走って来た方を見て、あんぐりと口を開けた。



 「ななっ、なんだありゃあぁッ!?」



 「ビッルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!」



 土煙の向こうでは、ビルに頭と手足を生やしたようなロボットが、バネのように伸び縮みする腕を振り回しながら街を破壊している。

 腕を振り回すたびに土煙があがり、建物の倒壊する音が聞こえる。ユタカは一目散にショベルカーに飛び乗ると、エンジンをかけた。

 「親方! 俺あっちの様子を見てきます!」

 「三島ァ!!」

 「弟分があっちにいるんです! 大丈夫、すーぐ戻って来ますって!」

 それだけ言うと、ユタカは器用にショベルカーを運転して更地を飛び出して行った。

 「若気の至りってヤツですかねぇ……。」

 「ンなこと悠長に言ってる場合か! おめぇもこっから逃げんだよ!!」

 「痛ッ! わ、分かってますよぉ。」


 殴られた頭をさすりながら、2人は慌てて更地を駆け出した。





 半壊した街では相変わらずビル型のロボットが暴れていた。さらにその上では西洋の騎士の甲冑のようなものが高笑いをしている。

 「フハハハハ!! いいぞいいぞビルゲルビ、そーれもっとやれい! 有機物共を恐怖のドン底に叩き落とすのだッハーッハッハッハッハ!」

 破壊されたビルの横からその様子を見ていたバンテラーとマサは、その異様な光景にげんなりとしていた。

 「バンテラー、なんなんだよアイツ……。」

 「少なくとも、私の親族や友人、仲間の類ではないことは断言しておきましょう。」

 「確かにあれが仲間とか兄弟だったらヤダよなぁー…。」

 「さ、うだうだ喋ってないで降りて下さいよ。」

 「ヤダ! オレも一緒に戦う!!」

 バンテラーは軽く溜め息を吐いて無理矢理マサを投げ出すと、さっさとあのビル型ロボットの方に走って行った。

 「ったー…あっ、バンテラー! おい待てよぉ!!」



 バンテラーは瓦礫や横倒しになったクレーン車の横を難無くすり抜けてビル型ロボット、ビルゲルビの足元近くまで行った。

 「チェインジッ!」

 「貴様はあの時の黒いロボットだな!! えぇい美しくない! やれ!ビルゲルビ!!」

 バンテラーは「そっちも十分美しくないですが」と言いたかったが、話の腰を折るはやめておいた。


 「ビッルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!」


 ビルゲルビが腕を伸ばしてパンチを繰り出した。

 「私に口上も言わせないとは、後で後悔しますよっ!」

 横に反転して避けながらバンテラーが言った。

 そのバネ状の腕は地面に当たると素早く元に戻り、その反動でまたパンチを繰り出した。

 「そーれそれそれぇ! どうしたどうした、守るので精一杯のようだなぁ!!」

 「くっ…!」

 だんだんと威力とスピードを増してくる攻撃に、バンテラーは防戦一方だ。

 「頑張れ、バンテラーッ!!」

 「分かってますよ!!」

 アレストフィールドを開くにも隙が見つからない。武器を取っても反撃するタイミングが掴めない。それどころか、今は回避するのが精一杯だ。

 「フン、反撃する余裕もないか! ならば遠慮なく攻撃させていただこう…ビルゲルビ! スクエアプレスだ!」

 「ビッ……ルゥゥゥゥウウウウウン!!!!」」

 ビルゲルビは、ぐっ、とバネのような脚に力を入れて空高く跳ね上がると、長方形の身体を正方形に変形させて自由落下に身を任せた。

 バンテラーは攻撃範囲から避けようとして走り出した。

 ふと向こう側に黄色い車が見えた。


 「ユタカにーちゃん!?」


 ユタカのショベルカーだ。このままでは確実に押し潰されてしまう!

 「! 全く仕方ないッ!」

  ダンッ!

 バンテラーは勢いよく地面を蹴って方向転換した。
助けようにも間に合うかどうか分からない…否、何であろうと間に合わせる!

 自分に言い聞かせてスピードをブースターで加速させ手を伸ばした。

 しかしビルゲルビの方が寸分早かった。


 「うわぁぁぁぁぁぁあああッ!!!」


 ―――――しまった、間に合わない!

  カッ!

 突然、ユタカのショベルカーが光に包まれた。

 ユタカは目をつむって身体を強張らせた。

 しかし、思っていた衝撃と痛みはない。痛みすら感じずに死んだのだろうか?


 「Yo、無事かい運転手サン!」


 声に反応してゆっくり目を開けると、そこにはカウボーイハットを被ったようなデザインのロボットが立っていた。腕にはロックの全盛期を思い出させるようなヒラヒラとしたパーツがついていて、脚はアメリカンブーツのような形だ。

 どことなくショベルカーを彷彿とさせる形をしている部分がある。

 「よかったね、兄さん。この人、怪我はしていないみたいだ。」

 顔がマスクで覆われたロボットが安堵の声を出した。カウボーイハットのロボットよりも頑丈そうで、肩にはクレーンがついている。

 彼を「兄さん」と慕っているということは、彼の弟なのだろうか。だとすると、あまり似ていない兄弟だ。

 「銀河警備隊、レッシング!」

 「同じくダージング!」


 「「只今到着!!」」


 2人が名乗りをあげ終わると、後ろから拍手が聞こえた。

 「カッコつけているところ申し訳ありませんが、ちょっと遅いですよ貴方達?」

 バンテラーは柔らかく叱りつつ、笑顔で仲間を出迎えた。

 「すみません、バンテラー隊長。」

 「これでも急いで来たんだYo!」

 「詫びと言い訳なら後でゆっくり聞いてあげましょう。さて、これで形勢逆転ですね、イルリッツ。」

 道路に投げ出されひっくり返っていたらしいビルゲルビは、ゆっくりとその巨体を起こし、体制を立て直していた。

 「えぇい、ポンポンポンポン私が見ぬ間に勝手気ままに増えおって! 立て、ビルゲルビ!奴らをスクラップにしてしまえッ!!」

 「ビッルゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!」

ビルゲルビが勢いよく拳を振り降ろした。


 「させるかYo!」「させないっ!」


 その拳をレッシングとダージングが押さえ付けた。

 「今だ、隊長!」

 「アレストフィールド、展開ッ!」


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