六 白い世界にたたずむ僕は真っ黒な異質物
さんさんと太陽が昇っているにもかかわらず、吹く風は凍えるように冷たい。
霜の降りた芝生の上を歩くと、葉が音を立てて崩れていく。
足を止めると、音も止まる。
「今年いっぱい、って、あと二月で終わりじゃないか。」
外套のポケットに手を突っ込んで、また歩き出す。
昼間だというのに、公園には彼の他に人影はなく、中途半端に白い世界で彼の黒いのはやたらと目立った。
「こんなに元気なのに、医者は嘘吐きだなあ。」
水の出てこない噴水の縁を歩きながら呟く。
ふっ、と飛び降りて商店街の方へ足を進めていく。
近づくにつれ、賑やかな声が聞こえてくる。
なんとなく振り返ると、灰色の世界が広々と視界一面にあり、寂れた噴水が一層それを引き立たせていた。
そして点々と続いている彼の足跡。
「貧乏は貧乏なりにしぶとく生きるのが一番さ。」
そうゆっくりと自分に言い聞かせた。
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