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4 ぼくらのこと
 バンテラーの修理が終わったのはそれから2日後。
バーンレットに連絡を受けたマサカズは、ダイチとアマネを誘っていつもの場所へ向かった。
 倉庫の前ではバンテラーが剣を抜き、盾を構えるレッシングと向き合っている。いつもと違う雰囲気に、子供たちは声を掛けるタイミングを見失い、どうしようかと顔を見合わせた。


「おや、少年たち」
「あ…バンテラーさん、もう大丈夫なの?」
「あなた方に心配される筋合いはありません」
「なによ、ありがとうくらい言えないの!?」


 食って掛かるアマネを無視して、バンテラーはレッシングとスパーリングを始めてしまった。
こんなこと、今まであったかな。
「あ、みなさんお揃いで」


 倉庫の中からダージングは片付けをしていたのか、小脇にはがらくたのような金属が入った箱を抱えている。
相変わらず、どこかマイペースな彼にほっとした。


「バンテラーどうしたちゃったんだよ!」
「急に真面目になったっていうか、何かあったの?」
「感じ悪いわよ、あれ!」


 子どもたちから一度に言われ、ダージングもたじたじだ。


「え、あー、あの、治ってからあの調子なんです。焦っているというか……やっぱりテイオルドに負けたことが大きかったんだと思います」
「テイオルド?」
「あっ、ええと、私はまだ片付けがあるので!」
「ちょっと、待ちなさいよ!」


 テイオルドについて口止めされていたのだろうか。
 慌てて倉庫の中に引っ込んだダージングを睨んでいたアマネの目がマサカズに向けられる。


「あんた、あたしたちに何隠してんのよ」
「なっ、何にも隠してねーよ!」

「だいたいロボットと友達ってだけでおかしいのよ! こないだだってあんただけ危ない目にあって、あたしたちがどんだけ心配したと思ってんの!? ロボットと友達になった自分がヒーローだとでも思ってるわけ? すごいのはバンテラーさんたちであんたじゃないの、気取ってんじゃないわよ!!」


 言葉に詰まって俯いたマサカズに、ダイチもフォローの入れようがなかった。自分もマサカズを心配していたし、隠し事をされるのも嫌だったから。
 気まずくなった雰囲気の中、顔を両手で覆いうずくまるアマネ。


「分かったよ…」


 マサカズはバンテラーたちが銀河系警備隊という組織であること、彼らの敵である「ダ・アーク」のこと、テイオルドとバンテラーのこと、知っていること、見てきたことを話せる限り話した。


「じゃあバンテラーさんの敵は、自分の兄弟ってこと?」
「そうなんだと思う」
「よくわかんないけど、きっと嫌よね…家族を捕まえなきゃいけないんだもの」


 倉庫の横で膝を抱えて話す三人。しんみりした空気の間で、金属がぶつかり合う音とバンテラーの声が聞こえる。


「た、隊長、兄弟なんだしっ、話し合えば、いいじゃんかっ、Yo!」
「無駄です!」
「へっ?」


 バンテラーの腕が止まる。
興醒めとばかりにテイラーソードを仕舞うと、岸壁から海を見た。
波は穏やかに揺れ、白い入道雲がゆっくりと流れている、平和な風景。


「あれがあの人の正義なのです」
「でも人間を殺すつもりなんだZe!?」
「他者の命を奪うことは道徳に反しますが、この星を救うことが彼の正義です。……全く! あなたのせいで興醒めしてしまったじゃありませんか、今日はもうやめです」


 ビークルモードに変形し、いつもの場所から出ていった。

 テイオルドの登場により、これからの戦いはより厳しいものになるだろう。
これからの戦いに不安を抱きながら、マサカズたちもバンテラーを目で追うのだった。



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