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3. vsパラソーン!
 次の日は夏らしい快晴だった。
マサカズたちは姉のショーコに付き添ってもらい、港までやって来たのだった。
 駐車場は他の見物客の車でいっぱいになっていたが、運良く見つけたスペースに停めると、マサカズとアマネが真っ先に飛び出す。


「見てみてあれよあれ!」
「うおぉ、すっげー!!」


 港には昨日寄港したイギリスの豪華客船、マイルス三世が停泊していた。
 港より高台にある駐車場からでも分かるほど巨大な船に、子どもたちは興奮を抑えられない。


「ありがとうございます、ショーコさん」
「いいのよ、私も来たかったから〜」
「ねーちゃん、あれ日本の船?」
「マイルス三世はイギリスの船よ、お金持ちの有名人がたくさん乗ってるんですって。いいわねぇ〜」


 船の近くまで行くと、見物に来ている子連れの親子やカメラのシャッターを切っている大人子どもで賑わっていた。

 すごい!
と、誰からともなく口にした。
近くで見るとより大きく感じられる船の迫力に、マサカズたちは背を反らすようにして見上げていた。


「あー、あたしもいつか大スターと結婚して乗ってみたいなぁ」
「ムリムリ、おまえみたいなのと結婚したいヤツなんていないって」
「なによバカマサ! あんたなんか頼んできたってお断りよ!」
「やめなよ二人とも〜…」


 あらあら、とショーコは頬に手をあてながら、弟の喧嘩を微笑ましく思う。
喧嘩するほど仲がいいというのだから、二人はよほど仲がいいに違いない。
そこにダイチが入って、いい具合に関係が保たれているのだろう。


「あら、クジラかしら?」
「ねーちゃん、ここの海にクジラなんかいねーよ」
「でもあそこ、なんか変よ!」
「水から何か出てくる!!」


 船の奥の方に見える海から、巨大な何かがせり上がってくる。
迷い込んだクジラだろうか、ドームのように海の水が押し上げられていく。

見物客がざわめきはじめた瞬間、海の中から巨大な傘をもったベースギア、パラソーンが現れた!


「パラソ〜〜〜〜ンッ!!」

「遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ! 我こそはダ・アークが頭領テイオルド様の懐刀、ダイペインなり!!」

「ろっ、ロボットだ!?」
「みんな逃げろぉ!!」


 悲鳴をあげながら逃げ惑う人々の波に、マサカズたちも流されていく。
 マサカズとダイチは「あらあら」と呑気にパラソーンを見上げていたショーコの手を引っ張り、マサカズはアマネの手を掴んだ。


「みんな、離れんなよ!!」
「ま、マサぁ!」
「分かってるよ!」
「あたしこんなとこで死ぬのイヤーっ!!」
「マサちゃん手が痛いわぁ」


 すぐにバンテラーを呼びたいのだが、ここで連絡をしてはショーコにバンテラーたちの存在を知られてしまう。
 駐車場がある高台に逃げてから、車に乗り込む前にマサカズはバーンレットを開いてバンテラーに連絡を繋いだ。


「バンテラー、港にあいつらが出た! 急いで来てくれ!」
『もう向かっていますよ少年』
「マサちゃん、何してるの、行くわよ〜」
「分かってる分かってる!」


 慌ててバーンレットを閉じ、車に乗り込んだ。
ショーコはキーを挿してエンジンを回したが、モーターが空回りする音しか聞こえない。


「あらあら、どうしましょう」
「どーしましょーじゃねーよねーちゃん!」
「あたし死にたくないーッ!!」
「ボクだってやだよぉ…」


 このままでは楽しい夏休みが最悪の夏休みになってしまう。
命を失うかもしれないという恐怖にアマネとダイチの目は涙でいっぱいになった。それはマサカズも同じだ。
 ショーコはキーを離し、後部座席に回ると、泣いている三人を抱き寄せた。


「大丈夫よ、ちゃんとお家に帰れるわ」


 ショーコが三人を抱き寄せると、車の正面を黒い車体が走り抜けた。
猛スピードで駆け抜けた車は、一瞬でロボットに変型しガードレールを飛び越えて港へ飛んだ。
目の端でしか見えなかったけれど、あれはよく知っている車。


「銀河系警備隊隊長、バンテラー! この星での侵略行為、並びに私の休暇を邪魔した罪は、重いですよ!」


 だん、とテイラーソードでパラソーンを指しながら、高々と言う。


「来たなデイダラー!」
「私よりでかいものを連れて他人をデイダラボッチ扱いしないでいただきたいものです!」
「貴様の相手はこのパラソーンだ、行けぇ!」

「ソ〜〜ン!!」

「させるかYo!」


 両腕の傘を振り上げた隙に、レッシングが正面からエレキギター型の武器、Vソニックで衝撃波を叩きつける。
腕の付け根を攻撃され、よろけるパラソーンにバンテラーが飛び蹴りを食らわせた。
 傘の軸のような細い身体が大きく仰け反り、盛大な水しぶきをあげて倒れ込む。


「エイダーズは今のうちに人間たちの救助を!」
「「「了解!」」」
「隊長、後ろ!」


 体勢の立て直しが早い。
意外にも一瞬のうちに立て直したパラソーンは、また大きく腕を振り上げた。
攻撃パターンは少ないのだろうか。


「これ以上の侵略行為、まかりなりませんよ! アレストフィールド展開ッ!!」


 バンテラーたちを取り囲むように風景が変わっていく。
アレストフィールドが展開される寸前に、小さな影が後ろから近付いてきた。


「バンテラー!」
「少年!? レッシング、彼を近付けては――」


 いけない、という前にアレストフィールドが完全に展開してしまった。
力になりたいと思い、いてもたってもいられなくて、車を飛び出したのだ。
寸手のところで滑り込んだマサカズは、息を切らして立ち止まる。

 一瞬のうちに移動させられたパラソーンは周囲を見回していたが、振り上げたままだった両手を小さな生き物に狙いを定めた。


「パラソ〜〜〜〜ン!!」
「危ないッ!」
「うわぁぁあああ!?」

 両腕が降り下ろされ、地面を叩く!
床の破片が辺りに飛び散り、パラソーンはゆっくりと腕を上げる。
 しかし、潰れているはずの獲物の姿はなかった。
どこへ行ったのか、と辺りを見回しているうちに、正面から巨大な何かが迫ってきた。


「デインローダーッ!」
「パッ、パッ、ラソ〜〜ン!?」


 開いた傘を正面に突き出すと、ぼよん、とデインローダーがめり込んだ。
まるでゴムのボールに突っ込んだような状態から、デインローダーは突っ込んだ勢いをぐんと跳ね返された。


「デインローダーが跳ね返された!?」
「最近こんな役ばっかりとか思ってるだろーなぁ」
「助けてもらっておきながら何を言ってるんですか貴方は!」


 バンテラーの中に入れられたマサカズが、シートベルトを絞めながらぼやいていた。
 跳ね返されたデインローダーは、壁にぶつかってまた跳ね返り、床に転がった。
痛々しいまでに凹んだボディが、ダメージの大きさを物語っている。


「これならどうだ! デルタサンダーッ!」
「トーンウェイブ・ショーターイームッ!!」


 レッシングとダージングが左右から挟み撃ちを仕掛ける。
しかし、またも傘で防がれ、ダメージを与えられない。
これなら海にいた方がまだ戦えたかもしれない。


「隊長、このままでは…」
「情けない声を出さないでくださいガードエイダー、勝機は必ずあります」
「しかし…」
「しかしもかかしもありません! 来ますよ!」


 ブン!と閉じた傘が叩き付けられた。
今度は手応えを感じたのか、ニヤリと笑うようにパラソーンのバイザーが赤く光る。


「うぉおお……!!!」


 パラソーンが当たったと思った腕は、合体したライジングが両腕で支えていたのだった。
衝撃で膝立ちになったものの、そこからぐいぐいと押し上げていく。


「み、みんな、今のうちに…!」
「ありがとうございます、ライジング!」


 ライジングが作ったチャンスで、バンテラーはデインローダーと合体しバーンテイラーに、エイダーズもエイディオンへと合体した。
 ライジングがパラソーンの下から抜け出し、2体の近くまで下がる。


「ケッ、毎度毎度骨のねぇ奴らばっかり出しやがってェ!」
「口が悪いぞバーンテイラー」
「てめぇは黙って見てりゃいいんだよッ」
「やれやれ…」


 飛び出したバーンテイラーの後をエイディオンとライジングが追いかけた。


「ムラマサソード! でああああッ!!」
「プラズマぁ…バァーンッ!!」


 再度両側から挟み撃ちを仕掛けるも、ムラマサソードは弾かれ、プラズマバーンは吸収されてしまった。
チッ、と悪態を吐くバーンテイラー。このままでは埒があかない。


「おいエイの字!何か作戦は!」
「私とライジングが奴の頭上から攻撃する。その間、奴の正面はがら空きになるはずだ」
「よっしゃあ、だったらしっかり時間稼げよォ!」
「「了解!」」


 エイディオンに抱えられて、ライジングも空中高くに飛び上がる。
 パラソーンの真上に狙いを定め、エイディオンはスパイラルランチャーを放った!
同時に、ライジングがプラズマバーンを放ち、パラソーンは両腕を高々とあげてそれを防ぐ。


「今だ! バーンテイラー!」
「やっちまぇえー!!」
「おうよ! 必殺……十文字斬りィイイッ!!」


 マサカズの声援を中から受け、パラソーンを十の字に斬りつけて走り抜けた!
静かに刀を鞘に収め、チン、と澄んだ音が静かに響く。


「パッ、パッ、パラ、ソ〜〜〜ン!!」


次の瞬間、パラソーンは大爆発を起こして吹き飛んだ。


「これにてェ、一件落着ゥ!!」



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