2. その頃のダ・アーク
「えぇい銀メッキ、さっさとこのゴミを片付けろ!」
「貴様が盗んでこいと言ったから取ってきたのではないか青大将!!」
「これが「ナツヤスミ」だと言うのか」
「そう書いてあったから持ってきたのだ!!」
ダイペインが指さした先にあるのは、人間用のレジャーグッズ。
ビーチパラソル、ビーチチェア、バーベキューセット、テントにクーラーボックス、サーフボードにビニールプール。
どれと限らずレジャーコーナーからごっそり持ってきたそれらは、勿論使い道もなく、ダ・アークの基地内にうず高く積まれたまま放置されていたのだった。
「こんなもの使いようもないゴミではないか」
「いちいち文句をつけるな青大将! 要は有効に使えばいいんだろう!?」
イルリッツは山の中からビーチパラソルを引き抜き、ベースギアを叩き付けた。
「行け、青大将!」
「フン、言われんでもそうする。俺様に命令するな」
変型するビーチパラソルを片手に、ダイペインはマントを翻して姿を消した。
いけすかない奴だ!
苛立ちをぶつける相手を失い、イルリッツは無用の山を蹴飛ばす。
それで気持ちが晴れるわけでもなかったが。
港の灯台の上に瞬間移動したダイペインは、うぞうぞと形を変えるベースギアを手持ち無沙汰に回していた。
このような形で戦場に赴くのは、全くもって不本意だ。
出てきてしまったのでは仕方ないと、懐から日めくりカレンダーを出して六曜を見る。
今日は先勝、明日は赤口。
「先んずれば勝つ、しかし既に申の刻を回っている…ならば明日、午の刻をもって決行する!」
そこまで言ってから、手の中でうごめいているベースギアを思い出した。
自分ほどのサイズまで成長していたベースギア、パラソーンはわたわたと短い手足を動かしている。
「貴様は海の中で待っていろ、明日迎えにくる」
「ソ〜〜ン……」
「男が情けない声を出すな! いいか、大人しくしているんだぞ」
パラソーンが男かどうかは分からないが、ダイペインは灯台の上から海に放り投げた。
どっぱん、と水しぶきをあげてパラソーンが落ちたのを見届けてまた姿を消した。
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