9.仲直りごめんなさい作戦、決行!
何泣いてんだYo、と言う前に、ロボットモードに変形したダージングがパワーショベルにすがり付いた。
「兄さぁあああん!!」
突然のことに、抱きつかれたままレッシングもロボットモードに変形した。
目から滝のような涙を流しながらすがり付いているダージングを、レッシングは必死に引き剥がそうとしている様子は、見守っていた子供達から見ればとても間抜けだ。
「私、私はやっぱり兄さんが兄さんでないとダメなんです! 私の兄さんは兄さんなんです!!」
「わ、分かった、分かったから泣くんじゃねーYo!」
頬擦りしてくる弟に顔をびしょびしょにされながら、その背を叩いて落ち着かせる。
仲直りのような、そうでないような。
「本当はもう、全然、私怒ってなかったんです、でも兄さんは怒ってそうだったし、どうしていいか分からなくて」
「俺も悪かったYo、喧嘩することでもなかったのにYo」
どこにあるか分からない鼻を啜りながら、涙声でダージングが続ける。
レッシングは時折頷きながら、弟の背中なり頭なりを叩く。
「美しきかな兄弟愛、ってか?」
「あ、ユタカにーちゃん」
「遅いじゃないの!」
マサカズ達の後ろから、ユタカが歩いてきた。相変わらずの作業着のままの彼は、2人を見ながら納得したように頷く。
「よくやりました、少年少女!」
同時にガサッと大きな音がして、流石にレッシングとダージングも驚いて飛び上がった。
「ば、バンテラー!?」
「エイダーズも!」
「何でこんなところに!?」
頭についた枝葉を払い落としながら、2人の後ろから現れたバンテラーが得意気にふふっと笑う。
ガードエイダーはロボットサイズのハンカチで涙を拭き、ファイヤーエイダーとレスキューエイダーはパチパチと拍手をしていた。
「折角ですから皆で見に来ました」
「あのな〜……」
「いいじゃありませんか、結果としては丸く収まったのですから」
バンテラーの言葉に、エイダーズが頷いた。
「兄弟喧嘩は構いませんが、程ほどになさい」
「あ、は、はいっ!」
「皆、迷惑かけて悪かったYo」
帰り道、喧嘩の原因はなんだったのかと尋ねたバンテラーに対して、建設兄弟は口を揃えて忘れてしまったと答えた。
喧嘩の理由などというものは、後になるとどうでもいいことであったり、喧嘩していた本人達は忘れてしまっていたりするものだ。
ロボットモードに変形した隊長からそれぞれビークルモードの尻から蹴りあげられたのを、遊び帰りの小学生達が指を指して笑っていた。
「兄さん、また明日から頑張りましょうね」
「おう、よろしく頼むZe、ダージング!」
兄弟の笑い声が夕陽に響く帰り道になった。
前へ
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!